愚慫空論

『サピエンス全史』その11~お前たちのための支配

『その10』はこちら (^o^)っ リンク

 


この新しい帝国のビジョンは、キュロスやペルシア人からアレクサンドロス大王へ、彼からヘレニズム時代の王やローマの皇帝、イスラム教国のカリフ、インドの君主、そして最終的にはソヴィエト連邦の首相やアメリカ合衆国の大統領へと受け継がれた。慈悲深い帝国のビジョンは、帝国の存在を正当化し、支配下にある民族による反乱の試みだけではなく、独立した民族が帝国の拡張に抵抗する試みまで否定してきた。



新しい帝国のビジョンとは何か?

  「お前たちのため支配

これはどういうことか?

進化の結果、ホモ・サピエンスは他の社会的動物と同様に、よそ者を嫌う生き物になった。サピエンスは人類を「私たち」と「彼ら」という2つの部分に本能的に分ける。「私たち」はあなたや私のような人間で、言語と宗教と習慣を共有している。「私たち」は互いに責任を負うが、「彼ら」に対する責任はない。「私たち」はもともと「彼ら」とは違うのだし、「彼ら」にはまったく借りがない。「彼ら」には「私たち」の縄張りに入ってもらいたくないし、「彼ら」の縄張りで何が起ころうと、知ったことではない。「彼ら」はほとんど人間でさえない。




「私たち」 と 「彼ら」

サピエンスでありながら その言語上の特性ゆえに虚構をもたないか
持っていたとしても極めて希薄にしかもたないピダハンの人たち

あるいはヤノマミ族の人たち
すでに虚構は抱えているけれども 原初的で 
現代人であり どうしようもなく〔人間〕である「私たち」よりも
ずっと〔ヒト〕として生きている者たち

『サピエンス全史』では
スーダンのディンカ族や
イヌイットのユピック族の名前も出てきていますが
みな 「私たち」と「彼ら」という区別を持ちます

これは虚構を操る能力を持つサピエンスだけの特権ではなく
生存戦略として社会的であることを選択した動物すべてに備わる属性です

いえ 社会的な動物だけではない
たとえば免疫反応
この場合 「私たち/彼ら」という言葉は不適切でしょうけれども
「自己/非自己」という区別はある
その区別がなければ そもそも「免疫」なる仕組みも必要ではない

さらにいえば 細胞そのものに「自己/非自己」がある
細胞には 単細胞生物か多細胞生物かを問わず
「膜」があって それなしでは細胞は細胞たり得ません



帝国とは何か?
まず王国とは違うということを確認しておく必要があるでしょう

王国とは「私たち」だけでなる社会の形態です
ところが帝国は「私たち」だけではない
帝国は「私たち」と「彼ら」の両方を含有します

そして 帝国においては 「私たち」は支配者であり
「彼ら」は被支配者です


支配者はなぜ支配者たり得るのか?
答えはカンタンで それだけの「力」を所持しているからです

サピエンスがネアンデルターレンシスを絶滅に追いやったであろうものと
同種の「力」
もう少し具体的にいえば 「暴力(ゲパルト)」でしょう

支配者は被支配者にまさるゲパルトを行使し得るがゆえに支配者
そして ゲパルトとは それを行使される者(被害者)の理解を必要としない
行使される者の理解を無視できるがゆえに 「暴力」であるわけです



ここまで踏まえたうえで もう一度

 「お前たちのための支配

ということを考えてみましょう

「お前たち」とは「私たち」が「彼ら」に向かって
上から(支配者として被支配者に)呼びかけるときの言葉です

「彼ら(被支配者)」の意向を無視することができる「私たち(支配者」)」が
なぜ わざわざ

 > お前たちのため

などと言わなければならなかったのか?
支配の原理からすれば 本来不要なはずの言辞です

不要なはずとはいっても その言辞は為されたわけですから
それを必要とする理由はあったはず
それも「私たち」にあったはずです


「私たち」が「彼ら」に求めたものは何か?

 「承認」

です
支配されることへの「承認」
本来 必要のない「承認」

必要がない「承認」をなにゆえ求めるのか?

 自己愛ゆえに です

前回 ぼくは自己愛について 次のように記しました

  自己愛が自己嫌悪の隠蔽に成功するには
  自己愛者の「立場」への他者からの承認を必要とする


「私たち」が自己愛者であれば 「承認」を求める相手は当然「彼ら」になります


(前略)やがて紀元前550年ごろ、ペルシアのキュロス大王が、それに輪をかけて大げさな自慢をした。

アッシリアの王たちはつねに、アッシリアの王にとどまった。全世界を支配していると主張したときにさえ、アッシリアの栄光を増すためにそうしているのは明らかで、彼らに後ろめたさはなかった。一方、キュロスは、全生界を支配しているだけではなく、あらゆる人のためにそうしていると主張した。「お前たちを征服するのは、お前たちのためなのだ」とペルシア人たちはいった。キュロスは隷属させて民族が彼を敬愛し、ペルシアの従属者であって幸運だと思うことを望んでいた。




『その12』へ続きます

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