愚慫空論

『リア充にも負けず』

ネットで出逢った自己愛表出の形をご紹介



『リア充にも負けず』

カップルにも負けず
クリスマスにも負けず
夏祭りにも 桜の切なさにも負けず
丈夫な心を持ち
嫉妬はなく
決して彼女の募集はせず
いつも一人で 耐えている

東にクリスマスイルミネーションあれば
行って 一人で楽しみ
西に花火大会あれば
行って 一人で楽しみ
南に桜の美しい花見があれば
行って 一人で楽しみ
北に恋愛映画あれば
行って 一人で楽しみ

切ないときは アニメを見て
楽しいときも アニメを見て
みんなに キモヲタと呼ばれ

ほめられず
必要にもされず
そういう独身男性に
わたしはなりたくない
幸せになりたい



素晴らしく切ない自己愛の表現ですね

いろいろと考えさせてくれます





誰もが知っている宮沢賢治の『雨ニモ負ケズ』
『リア充にも負けず』は『雨ニモ負ケズ』のみごとなパロディになっていますが
最後だけ パロディから逸脱してます

『雨ニモ』のほうは 

 > わたしはなりたい

で終わりますが
『リア充にも』は

 > わたしはなりたくない

と それまでの流れをひっくり返して

 > しあわせになりたい

と付け加えてあります
つまり 「パロディの部分」と「否定と追加」の二部構成になっている観ることができます
そして それはそのまま 自己愛の構造 になっています

ここが『リア充にも』の秀逸なところです
二段構えの表現が見事に自己愛の表出になっています


パロディの部分で綴られているのは

 「過小」な自己愛

です
何が「過小」なのかというと 周囲からの承認
周囲からの承認が過小であるという自己認識です

「過小」な自己認識は 『オーバーフェンス』で表現されていた「底辺」と同様のもの


『オーバーフェンス』の場合 自己認識は「壊れている」でした
でも 実際は「壊された」です

『リア充』も同じ構造になっています

 > みんなに キモヲタと呼ばれ

「みんなに呼ばれた」だけではありません
周囲からの認識を受け容れて それを自らの認識としている
「呼ばれた」だけなのに 自らも自らをそのように「呼んでいる」


でも 本心では 自らをキモオタなどとは呼びたくない
最後の

 > わたしはなりたくない
 > しあわせになりたい

という「否定と追加」がそのことを表しています

本心ではそれを否定しているにもかかわらず
自らをそのように位置づけてしまうこと
これこそが 自己愛 です


自己愛とは自己嫌悪の隠蔽です
『リア充にも負けず』は タイトルとは裏腹に「負けて」しまっていますが
何をどう負けているかというと

 自己嫌悪を隠蔽するに足る他者からの承認を得られていない

ということです
「リア充」と呼ばれる人たちが自己嫌悪を抱えていないわけではない
「キモオタ」との違いは

 自己嫌悪を隠蔽するに足る他者からの承認を獲得している

という点
が どちらも自己嫌悪を隠蔽しようとしている点 では同じです

すなわち

  自己愛が自己嫌悪の隠蔽に成功するには
  自己愛者の「立場」への他者からの承認を必要とする


前回で紹介した『太陽の蓋』という映画



この映画は自己愛の視点で見れば大変に面白い
胸くそ悪くもなりますが...

たとえば映画の頭の方で シビアアクシデントの一報があった時
原子力保安院の官僚が吐くセリフ

 「私は東大経済学部卒ですのでわかりません」

この発言の無責任さは「怒り」を起動させますが その追及はともかく
なぜ彼はこのような発言をしなければならなかったのか
「東大」という 関係のない言葉を織り交ぜなければならなかったのか

このセリフは
シビアアクシデントの発生によって「立場」を失った自己愛者の「懇願」です
なんとか「立場」を保持させてくれという願望が「東大」という言葉を口にさせた
それこそが隠蔽に足る他者からの承認を獲得していた彼のアイデンティティであり
それを剥き出しにするからこそ 懇願 であるわけです




『リア充にも負けず』が表現しているのは 「立場」のなさ です
「キモオタ」はカースト下位であって自己嫌悪隠蔽に足る承認を得ることができません
筆者が抱えいるのは「過小」な自己愛です

その「過小」を真正面から表出した
そこには自分自身を嫌悪せず肯定したいという自愛が顔を覗かせています
だから 読む者の心に響きます



最後にシューベルトの音楽を



弦楽五重奏曲の第四楽章
『リア充にも負けず』の詩を読んだ時に 浮かんできました

美しいけれど どこか切迫したところがあるメロディーは
隠蔽に足る承認を求めてあがく「過小な」自己愛者のようです

その足掻きはヒートアップして 最後の最後ですっ転んでしまう
ちょっと救いようのない音楽です...

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