愚慫空論

間伐は温室効果ガス吸収に効果なし

今朝、仕事に出かける前の朝のニュースを見ていたら、こんなのが報道されてました。

森林の間伐に補助 法案提出へ

京都議定書で、日本は、2012年までに二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を、1990年と比べて6%削減することが義務づけられています。この目標の達成に向けて、農林水産省は、今後、東京都の面積のおよそ15倍に当たる全国の330万ヘクタールの森林で間伐を行って、温室効果ガスの吸収効果を高める必要があるとして、間伐を促進するための新たな制度を設けることになりました。具体的には、市町村が森林の所有者の同意を得て間伐を行ったり、作業用の道を整備したりする際、必要な経費の半分を国が補助します。また、都道府県や市町村による地方債の発行は、これまで公共施設の整備などを目的としたものに限られていましたが、間伐の費用を確保する際にも発行できるようにします。農林水産省は、こうした制度を盛り込んだ法案を今の通常国会に提出する方針です。

NHKニュースより

「森林で間伐を行って、温室効果ガスの吸収効果を高める必要がある」とは、はて?


私が樵をしているのはいつも書いている通りだが、これは私自身が日々の糧を得るためのことであって、決して地球環境を守ろうとか、そんな高尚な理由で仕事をしているのではない。とはいえ、自分の仕事が少しは役に立っているのだというアリバイを得るために、ほんの少し森林のことについて勉強してみたことはある。その勉強成果が果たしてどの程度のものなのかは心許ない限りだけれども、一応、その成果に従うと、間伐では温室効果ガスは吸収できないはず、なのだが?


まず、森林にはCO2(≒温室効果ガス)を吸収する森林としない森林とがある。豊かな自然環境として崇め奉られる人の手が入らない原生林などは、吸収しない森林。対して、吸収する森林の代表は悪名高き人工林。つまり人間が木材生産のために植えた森。

植物は光合成によって空気中のCO2を吸収し、CO2を分解して有機物を作り、その有機物で植物の体を作る。だから植物、特に樹木はCO2を吸収する。樹木の体の主な部分、人間の目から見れば木材は、いわばCO2の貯蔵庫。とならば樹木が大量に生えている森林はCO2の貯蔵庫ではないのか?

それはその通りなのだが、この「貯蔵庫」は無限にCO2を蓄えられるわけではない。蓄えられる量には限界がある。天然の原生林などは限界までCO2を蓄えた森林なのである。
これらの森の中ではさまざまな年齢の樹木――成長中でどんどんCO2を貯蔵しているもの、限界まで生育してもはや貯蔵をしないもの、寿命を終えて枯死して、その身体に蓄えたCO2を再び放出しているもの――があって、全体としてはブラスマイナスゼロ。平衡状態にあるわけだ。

対して人工林はほとんどの場合いまだ貯蔵途中の森林であって、まだ貯蔵余力がある。これはその成り立ちを考えれば当然。人工林は一度、原生林なりを全て伐り払った後、人間が一斉に苗を植えたもの。生育限界がくれば再び伐り払われる運命にある。このあたり人間が育てる農作物や家畜などと同じ。人工林として存在しているということはまだ生育余力があるということであり、その余力がつまり「温室効果ガスの吸収」となる。


「森林の生育余力」=「CO2の吸収量」。これを時間を区切って、例えば年単位で考えると「一年の森林の成長量」=「一年間のCO2吸収量」となる。では、間伐には森林の成長を促す作用はあるのか? ここがポイントになる。

結論を先に言うと、CO2吸収に限って言えば、ない。森林の材木としての価値、つまり人間の都合で見た価格という意味では間伐には価値はあるが。


一応、間伐について説明してみる。

人工林は、伐り払われた山の斜面(でなくてもいいのだけど)に人間が樹木の苗を植えることから始まる。海外では苗を植えるのではなくて周囲の森林から自然に種が飛んできて発芽するのを待つというやり方もあるが、日本では苗を植えるのが普通。植える本数が地域や山主によってまちまちだが、現在は1haあたり3000本から4000本程度が標準になっているだろうか。

植えた苗は自然に生長していくが、最初に植えた苗がそのまま全て大きな樹木にまで成長するわけではない。林業の教科書的なやり方では、植林して50年したら収穫。収穫時の本数は、多くても1000本程度。500本以下にしてしまうこともある。

この本数の減少は、自然に淘汰されて減少していくのではない。人間が手を入れて間引きする。これが間伐。間伐をすることで、人工林は商品価値の高い木材へと成長していく。こうして木材を生産するのが林業である。


間伐の効果について、ごく単純なモデルて説明してみる。

ここに植林して50年目の人工林があるとする。植林本数は3000本。50年目のCO2蓄積量は森林全体で6000Nであると仮定する。

6000Nは3000本の苗が50年かけて蓄積した量だが、この6000Nの数値は50年目に3000本生えている森林(つまり間伐なし)と1000本の森林とでは異なるのか? 答えは、異ならない。同じ。3000本あろうが1000本あろうが、50年間(あるいはそれ以上、それ以下でも)の蓄積量は同じなのである。

商品価値という観点で見れば、3000本の森の一本当たりの蓄積量は2N。対して1000本のほうは6Nであり、2Nよろ6Nの方が大きい、つまり1000本の森のほうが大きな樹木が生産できるということで、商品価値は高いということになる。だが、CO2吸収という観点で見ると、どちらの森林も同価値。つまり3000本を1000本に間引きする間伐には、温室効果ガスの吸収には何の貢献もしていないことになる。


では、間伐によってCO2吸収は全くできないのか、といえばそうでもない。樹木は、それが生育途中であれ限界に達したものであれ、CO2の貯蔵庫であることには変わりはないのだから、材木を有効活用することが温室効果ガスの吸収に繋がることには間違いない。

以下、同じモデルで説明してみる。

モデルの人工林に25年目で間伐を行うことにする。間伐率は50%。半分を間引きする。25年時の森林全体の蓄積量は3000N。1本あたりN。これを半分間伐すると、のこりは1500本で、蓄積量1500Nとなる。

この後25年経過し、本数1500となった森林の蓄積量は当然、6000N。つまり25年間で4500NのCO2を蓄積したことになる。間伐しなかった場合25年間の蓄積量は3000Nだから、間伐を行ったほうが吸収量が多い=間伐は温室効果ガス吸収量に効果があるように見えるが、問題は25年時に伐った1500Nの取り扱いである。

もし、1500Nの蓄積量をそのまま放置したのであれば、その1500Nは分解されて再びCO2となって大気に還る。つまり間伐は1500NのCO2を増加させたことになる。4500N-1500N=3000N。間伐しても、間伐材を有効利用しなければ、温室効果ガス吸収には何の効果ももたらさない。ごくごく単純な話である。


さて、話を元に戻して、今朝のニュース報道の話。「具体的には、市町村が森林の所有者の同意を得て間伐を行ったり、作業用の道を整備したりする際・・・」とあるが、この「作業用の道」は間伐材を有効利用するための「道」、有効利用するために間伐材を搬出するための「道」であろう。そうした意味では、この新制度は「温室効果ガスの吸収効果を高める」ものになっていないわけではない。ないのだが...。

従来の制度でも間伐および作業道への補助金制度は存在する。今回新たに設けられたわけでもないし、補助金にしてみたところで、現場の実情をみると、補助金の範囲内で(つまり森林所有者の負担なしで)間伐や作業道敷設を行っているのが実情。また、所有者は個人でも、保安林指定を受けることで100%国の費用で森林整備を行ってもらえるといったような制度もある(ただし自由に伐れなくなるが)。この新制度の目新しいところは、おそらくは補助金の額や国・市町村間の負担比率の問題より、330万ヘクタールという数値を上げて間伐が義務付けられてしまうというところにあるのだろうと思う。それも、市町村に借金までしてやれ、と。

京都議定により国はCO2削減の義務を負っている。これはもちろん国民一人一人の義務でもあることなのだが、それにしても、その義務を市町村に転嫁するのはおかしな話だと思う。それに市町村のレベルで考えると、大量に温室効果ガスを排出するのは間伐すべき森林を持たない都市であり、間伐すべき義務を負うのは温室効果ガス排出量がすくない地方。国の義務をただでさえ財政基盤の弱い地方に押し付けている、ということになりはしないだろうか?

そもそも温室効果ガス吸収の効果があるのかどうかも疑問だ。330万ヘクタールの森林全てに間伐材搬出のための作業道が敷設されるなんてことは、考えられない。このうちの10%にでも路網整備がなされれば、驚愕か、さもなくば唾棄に値する。

唾棄に値する、とは次のようなケース。路網整備が進む→作業道にて活躍する林業用の機械が売れる→役人が機械メーカーや業界団体に天下り。土地改良区やら農協やらでどのようなことが行われていたのか、私はよく知らないが、同じようなことを京都議定書を隠れ蓑に考えているのかもしれない。

コメント

こんにちは。
さすがは専門家ですね。とても勉強になりました。
森林が吸収するCO2がプラスマイナス0になることは、武田邦彦先生の著書「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」でも述べられていますが、どうやら日本はこの手の意見は知らん顔して抹殺しようとしてます。不思議です。
>路網整備が進む→作業道にて活躍する林業用の機械が売れる→役人が機械メーカーや業界団体に天下り。
やはりこれが正解なのではないでしょうかね。 

木材の耐久性

 こんにちは。
 法隆寺とかの歴史的建造物であれば、火災で焼失しなければ、何百年も有機物を「貯蓄」していますが、
「間伐材」で何を作る…?

 せめて、100年ぐらいの耐久性のあるものの形で…
と思うけれど、「木造建築」をバカにして「鉄とコンクリート」で「近代化」だというのが、土建国家。

ちと長すぎて、議論の骨格が判り難いです。

大事な話なんですけど、愚樵さん。
総炭素同化は同じという点をもっと「くっきり」出さないと。
むしろ、森の安定性を各地で[人口増圧力の影響や]森林のプロの減少、水の効率的貯留や蒸発防止の劣化や海への一気に流してしまう保水措置の劣化? 嘗ての農業用用水路やため池をどんどん埋め立て宅地開発して、道をアスファルトやコンクリートで地表を覆い、吸水性・保水力を低めた等・・。
高層化・緑化不足のヒートアイランドで、街に熱団が発生し易くなり、局所的豪雨が起こりやすくなり、一気に下水管を溢れさせた上、川の堤防を決壊させ、海に流れ込む・・。ここらの土木政策、山と谷に満ちた日本列島。狭い海際に集中的に人が住む巨大産業都市国家の居住政策にも関わる問題なんでしょう。ここらのグランド・デザインを、民間委託していいのか? 大阪でもベイエリヤやベルタ等、北海道でも苫東等各地の三セクの破綻は何を物語っているのか? 公害論の宮本憲一氏が金沢大学時代から「高山や富山の例」で指摘していた情けなく古いお話・・。あちゃあ、他人のこと言ってて、僕も長い文章に成ってしまいました。堪忍ね~・。

間伐はエネルギー利用しないと意味ないですね

 さすが愚樵さん。すばらしい記事でした。
 間伐したら、それのみでCO2吸収が増えるかのように言う林野庁はとんでもないですね。そりゃ、間伐された後に残った樹木の一本当たりの蓄積量は増えるけど、森全体として見れば全く増えないのに。
 正解は「間伐材のエネルギー利用をして、石油・石炭の消費量を減らすこと。それによって初めて温暖化対策になる」です。
 その際、危惧されるのが、愚樵さんのいう、「路網整備が進む→作業道にて活躍する林業用の機械が売れる→役人が機械メーカーや業界団体に天下り」ですね。林野庁の、温暖化対策を隠れ蓑にした土建政治の下心は見え透いえます。
 で、私の考えですが、間伐の作業現場から主要な幹線道路までの搬出は架線か人力でやるべきだと思います。背中に背負って運ぶのがいちばんよいと思います。それが森を荒らさな最良の方法でしょう。あまり作業道を増やすと、そこか土砂災害の原因になることが危惧されます。
 不効率な方が、雇用を多く吸収できるのだから、絶対によいと思います。不効率な方法でやって、雇用を多く吸収できた方が、内需の拡大につながって日本経済全体にとってもよい。
 一刻も早く、間伐材の運搬作業は、全額一般会計から投じて、なるだけ森林を傷つけないで行うべき公共事業なのだ、という認識を確立せねばならないと思います。

 

てっとり早いところで、薪ストーブ?

関さん、こんにちは。

>正解は「間伐材のエネルギー利用をして、石油・石炭の消費量を減らすこと。それによって初めて温暖化対策になる」です。

はい。まったくその通りです。間伐材を炭素貯蔵庫として利用できればカーボンネガティヴになりますが、そこまでいかなくても十分。間伐材はどんどん燃やしていいんですから、手っ取り早いところで暖房等に利用すればいい。実際、原油高騰の煽りを受けて薪ストーブやペレットの利用が進んでいるみたいですね。

>間伐の作業現場から主要な幹線道路までの搬出は架線か人力でやるべきだと思います。背中に背負って運ぶのがいちばんよいと思います。

CO2削減の観点から見れば仰るとおりですが...。ただそういう意見は「バカは従順であれさえすればよい」というお考えの方も唱えそうなので、全面的に賛成とは言いかねるんですよね。

******

三介さん

>総炭素同化は同じという点をもっと「くっきり」出さないと。

ご指摘ごもっともです。まあ、樵が書く文章ということで大目に見てくだされ。

森林の有効利用とひと口に言っても、これは実に多様な問題を孕んでいます。人類の文明のあり方そのものに関わってくる問題ですから。怪傑ズバット鮮やかな切り口を示すのには、なかなかに大変なこと。才能が要るでしょう。

******

ママちゃん

>武田邦彦先生の著書「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」

それ、私も読みました。「そこまで言っていいんかい!」に当人が登場してるのを見たので、買って読みましたよ。

******

第二迷信さん

関さんもお書きになってましたが、間伐材は燃料に。まず森林資源の豊富な地方から、エネルギーが自給自足できればいいですね。都市の消費エネルギーまでは日本国内の森林では賄えませんから、別の方法を考える必要がありますが。原子力とか(ウソ)。海草等の海の森林資源も考えてみる必要がありそうです。

森林の有効利用

>森林の有効利用とひと口に言っても
御尤もでございます、愚樵さん。
何時だったか、カナダDE日本語さんところで、かのkaetzchen氏が、日本では、杉や檜に植林して、ほとんどの原生林は壊滅というお話をされてました。
林野庁としては、儲かる樹で林業を殖産したかったんでしょうけど、運搬コストが掛かりすぎるんでしょうね。山あり谷ありのこの国では・・。で、すーぱー林道なんて自然破壊的な土木工事が蔓延って・・。
昔、朝鮮の古建築っていう本を読んだことがありますが、かの地には、杉や檜といった直立材が少ない[育ち難いのか、意図的に育てないのかは覚えてませんけど]
ので、ひん曲がった松材をよく使うそうです。蝦虹梁[エビコウリョウ]など、禅宗様式でも出て来ますが、やはり組合せ・仕舞いが難しいので、大量に捌くには不向きな材と言えますね。ここらの「合理主義」も森林活用との摩擦大き(樹)ぃかと思います。

呼ばれたので(笑)

三介さん,お呼び頂いてありがとうございます.

愚樵さんが分かり易い数学モデルで書かれていた通り,具体的な針葉樹林での間伐の効果なんてのは,あんなもんです.(^^;)

日本列島は北海道と深い山林地帯を除けば,落葉広葉樹が全んどを占めていました.ところがこれらは成長が遅く,木そのものが太くならないから売り物にならない.

しかも大和朝廷が四国や山陰や紀伊半島や中部山地や東北地方のヒノキをありったけ畿内に集めてきたせいもあって,ヒノキやマツやスギを日本全国に植え始めた.

当然,針葉樹は成長が速いから,雨の多い四国山地や紀伊半島ではヒノキだらけになって地主が大儲けする.かくて天皇制システムは山林地主との取引で確立した(笑)

愚樵さんが数学モデルで書かれたことを分かり易く解説すると,まぁこんなことになります.

「そまし」は「曾益し」?

kaetzchen さん、超わかりやすい解説有り難うございます。
>山林地主との取引で確立し
確か「大誘拐」という日本映画で、紀州の山林王・婆さんが出てましたね。今は世界の広葉樹や針葉樹をボカスカ安価で輸入してるので、また和風建築も洋ウ風におされ気味で、檜やさんもあまり儲かってないんじゃないでしょうか?
建築確認・官製不況にもめげずに、住友さんとかが、ぼこぼこ建売等、販売しているようです。そう言えばお正月、たまたま吉野に行く途中で道に迷ったら、住友さんのデッカイ木材工場群に遭遇しましたよ。
あ、そうそう、石母田氏の「中世世界の形成」で、「そま師」って言葉をはじめて知りましたけど、木こりさんや大工さんの源流ですね。当時の大土地所有者である、寺社に従属してたんでしょうか? 悪党とかいろんな裁判のやり取りとか、技術史とは違う、実力闘争史や法制的な複雑さに「くらくら」して何が描かれてるんか、さっぱり分かりませんでした。

間伐材の使い方

×第二迷信さん,こんにちは.

| 「間伐材」で何を作る…?

で,ぷぷぷ……(笑) と最近笑ってしまったのが「マイ・箸」運動です.箸を持ち歩くのはその人の嗜好ですから一向に構いませんけど,一緒にコンドームのような形をしてる,エタノールを染ませた脱脂綿もお忘れ無く…….(大きい調剤薬局・薬店なら売っています.薬剤師さんに聴いてみて下さい)

どっかのコンビニは「マイ・箸」を持っていくと色々サービスがつくとかですけど,エタノール含有脱脂綿も一緒に持っていかないと,たちまち食中毒になりますよん(笑) この手の困った「嘔吐下痢症」の患者さんって,結構多いんです.

昔,留学帰りに中国は上海の豪華ホテルに泊まったとき.驚いたのが,占いの筮竹のように,塗り箸がきれいに筒へ突っ込んであるだけ.中国の高級料理を食べるときのマナーは「點菜」(てぃえん・つぁい)と言って,多人数で多種類の料理を,円卓に載せて廻しながら,お互いに箸を突っつき合って,上も下も交わって会食する事.

その時は半分,偉いさん(日本語がすごく上手でした)との就職の面接も兼ねてたんだけど,あなたは日本人にしては點菜がとても上手だとほめられて驚きました.中国ではちゃんと間伐材を箸に加工していますよと言われ,恥じ入ったものです.(あとのことを考えると,中国に就職してた方が良かったなぁ……と思う今日このごろ)

いまさらながら、読ませていただきました。
なかなか興味深い内容でしたが、疑問な点があったので質問させていただきます。



>ここに植林して50年目の人工林があるとする。植林本数は3000本。50年目のCO2蓄積量は森林全体で6000Nであると仮定する。
6000Nは3000本の苗が50年かけて蓄積した量だが、この6000Nの数値は50年目に3000本生えている森林(つまり間伐なし)と1000本の森林とでは異なるのか? 答えは、異ならない。同じ。3000本あろうが1000本あろうが、50年間(あるいはそれ以上、それ以下でも)の蓄積量は同じなのである。

3000本の苗が50年かけて蓄積した量が1000本のそれと異ならないというのは、森全体の総吸収量を最初に6000Nと固定したからであって、現実にそうなるとは思えません。
極論でいえば、たとえ1万本植えようが、もしも1本しか植えなくても総吸収量は変わらないということになります。そんなのはどう考えても不合理ですよね?
ゆえにこの論理はおかしいと思うのですがどうでしょうか?

TAGさん、こんにちは。

森全体の総吸収量を最初に6000Nと固定した

えっと? なぜおかしいのでしょう。6000Nは計算しやすいように設定しただけのことだということはお分かり頂けるでしょうが。

炭素吸収量は光合成が行なわれた量に比例する。
光合成は太陽光の量に比例する。
太陽光の量は面積に比例する。

もちろん、樹種によって炭素蓄積量は違います。ここは人工林ということですので、樹種はひとつと仮定しています(本文に書いてはいませんけどね)。ですから、

一定面積の森林が一定時間に行なう炭素蓄積量は一定

と想定できる。モデルですからあくまで想定です。その量を6000Nとしただけのことです。

たとえ1万本植えようが、もしも1本しか植えなくても総吸収量は変わらないということになります。そんなのはどう考えても不合理ですよね?

いいえ。まったく不合理ではありません。

一種類の樹種によって一定面積が覆われているなら、一万本であろうが一本であろうが、蓄積量は同じ。「モデル思考」ですから。

モデル思考と現実とは一致しない、と言われるならそれはその通りです。植えて50年経って一万本も成長している森はありえませんし、一本しか植わっていなければもやは人工林ではない。

現実とモデルの差を理解してください。

質問させていただきます。

大変、勉強になりました。ありがとうございました。一つ、質問させてください。
間伐材は、放置してしまえば分解されCO2の発生原因になると思いますが、
これを炭にやき『炭素』として永久固定させた場合には、どのようなお考えになりますでしょうか?

お答します。

・斎藤隆典さん、ようこそ。

単純に考えれば大気中のCO2を削減することになると考えられます。樹木は光合成で大気中のCO2を一時的に固定するわけですが、それを永久固定させるならば、大気には戻らなくなりますね。

ちょうど化石燃料を燃やすのと逆になるかと。

ありがとうございます。

 順序が逆になりましたが、私は、愛知県に住む段戸山 三河炭やき塾 代表の『炭やき職人終身見習い』です。よろしくお願いいたします。 皆様の様々なご意見を拝見させていただき、大変勉強になりました。ありがとうございました。
 ここで、私の目指しているところを紹介させていただき、出来れば、ご意見・ご指導をいただければ幸いです。
 間伐が進まない、あるいは間伐材が放置される理由は様々あると思いますが、一言で言ってしまえば「お金にならないから」と考えます。そこで、環境への影響も兼ね(炭素固定)、間伐材を『炭』に焼くことで価値を出そうと考え取り組んでいます。その炭の用途として、住宅用調湿材、土壌改良、河川の浄化等がありますが、我々は、炭を山に撒き、埋め、山に戻すことを最大の目的として取り組んでいます。これは、酸性雨に犯された森林を中和させる目的です(後に述べます)。また、副産物の木酢液を田畑で使用し(減農薬・有機栽培)青果物の生産を行います。
以下、大きく分けて二つのしくみを目指し、活動しています。
①間伐→炭・木酢液→青果物→消費者→間伐費
間伐材からできた炭や木酢液を使用した野菜を消費者が購入することで、間接的に間伐材の価値を生み出すしくみを作る。
②間伐→炭→行政・自治体・森林保護団体→山に撒く
間伐材からできた炭を、行政、自治体・あるいは森林保護活動を行う団体等が買い上げ、山に撒く。
今までの森林保護活動の主な取り組みは植林でしたが、これを『炭撒き』にシフトする必要を強く感じています。
 その理由は次の通りです。今、日本の山林は、主に国の北からマツ枯れから始まりナラ枯れの現象が日本全土に広がりつつあるようです。この枯れの要因を『虫』のせいであると、国は過去2兆円もの予算を投入し、殺虫剤等で虫の駆除を行ないましたが、結果、成果は全く上がらなかったようです。一方、佐渡のナラ枯れを炭で救った事例があります。これは、マツやナラが枯れるのは虫のせいではなく、「酸性となった土壌が木を弱らせ、弱った木に虫がつき枯れた」という解釈で、酸性の土壌を炭で中和させることで、弱った木を強くさせ、結果的に虫もつかないようになり、枯れから救ったようです。
林野庁も過去の反省から、炭で土壌を中和する手法に注目し、昨年の9月頃から会津の山で試験を開始した様です。
 この試験の良い結果が出た時の準備のため、私たちは今、間伐材を炭にやいています。PH4を切る土壌の弱った木の周りに炭を撒き、経過観察を始めました。また、炭と木酢液を使用した野菜の生産・販売も始めています。すぐに行政や自治体が賛同してくれるとは思いませんが、この愛知県が全国のモデルとなるよう、先は長いですが少しずつ取り組んでおります。
以上、要領を得ず大変長い文章となってしまい申し訳ございませんでした。

炭やき職人さん

・斎藤隆典さん、おはようございます。丁寧なコメント、ありがとうございます。

間伐が進まなくなったのは、仰るように材価が下がって経済的に成り立たなくなったことが大きな要因ですが、実はもっと大きな理由があって、それは林業という産業が全域化してしまったことなんです。

日本における林業の歴史は古いものがありますが、それでも林業地というものは限られていました。機械動力がなかった昔、材木は搬出が最大の問題でした。権力者が巨大建築物を建てるために労働力を使役して材を搬出するならともかく、経済的に見合うように供給するにはその適地は限られていたわけです。山林の多くは、地元民が里山として利用するものだったんです。

現在の日本の林業地の多くは、戦後の拡大造林計画によって人工林とされたものです。そして、戦後に拡大した林業地のほとんどは、そもそも採算など採れないものだったんです。高度成長でそのことが見えなかっただけの話です。

三河炭やき塾のHPを見させていただきました。斉藤さんは高い志をもってやっておられると拝察します。

今までの森林保護活動の主な取り組みは植林でしたが、これを『炭撒き』にシフトする必要を強く感じています。

については、私に同意できるだけの知見がないので保留させていただきますが、松枯れやナラ枯れの現象が土壌酸性化によって引き起こされるというのは可能性としては高いと思います。

ですが、間伐材の価値を高めるという方法論は、私は現在の経済システムのままではどうにもならないと考えています。

理由は単純です。それが炭焼きに供されるものであれ、材としては間伐材であろうが皆伐材であろうが同じだということ。そして皆伐材の方が安価に供給できるということ。この経済原則はどうしようもありません。

間伐材が皆伐材よりも価値を見いだせるとするならば、この記事で論じたように、利用の仕方で温室効果ガスを固定することができるというものです。その点でいけば炭に焼くことで炭素として固定化し、さらに土壌改良を進めようとする斉藤さんの方法論は大変有効だと考えられます。ただ、その有効性を発揮できるような経済システムには現在はなっていないということ。炭素税でも導入され、大気中のCO2削減量に比例して収入が得られるといったような形にでもならない限り、この大枠に代りはありません。

というわけですから、有り体に申し上げて、「炭焼き塾」という団体の付加価値は、間伐材の付加価値を経済的に導き出すということでは高めることはできないでしょう。環境改善に有効な方法を開発することで行政の環境政策の一端を担うか、あるいは環境改善に取り組む団体として認知されることで市民の学習意欲に訴え、教育もしくは娯楽を提供する団体としての価値を求めるか。現段階では、そのどちらかしか選択肢はないでしょう。

せっかくお作りになった炭焼き塾です。高い志を生かすためにも、行く末を見極めつつ是非とも存続・発展させていってください。

質問です

とても興味深く読ませていただきました。ふたつほど質問させていただいてよろしいでしょうか?
1.間伐により森林に凹凸ができ、表面積が増えることから光合成の量が増える(炭素吸収量が増える)ということは考えられますか?
2.日本の森林で主流となっている切捨て間伐により林内に放置された残材が、分解する過程でメタンガスを放出し温暖化を促進させる、という説がありますがそれについてはどう思われますか?

Re:質問です

イトウさん、ようこそ。お答しますね。

まず1.ですが、光合成の量と森林の表面積は関係がありません。光合成と関係があるのは日射の量で
、それは、森林の表面積に関係なく一定です。ですから、一定面積の森林における炭素吸収量も一定です。

次に2.間伐材からのメタンガスの放出は、仮説ではなく、事実だと思います。で、メタンの温室効果は炭酸ガスの21倍ということは知られていますが、その量がどの程度なのかはわからないので、「どう思うか」に答えようがない、というのが答えになります。

木材の腐敗によってメタンガスが出るというのなら、間伐をしようが、放置して自然に枯れ木が出来て腐っていくことになろうが、メタンガスの放出量という点では変わらないようにも思われます。メタンガス発生の機序を理解していませんので、確定的なことは言えませんが。


コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://gushou.blog51.fc2.com/tb.php/91-ac694499

空気を読むに敏な人

「冗談」みたいな選挙が、「悪い冗談」みたいな結果になってしまいましたね。  ああ、選挙は人気投票か、とため息をつきながら、とにもか...

朝青竜問題のうがった見かた

閣僚の疑惑や問題発言,とどめは絆創膏大臣で自民党敗北必至の2007・7・29第21回参議院選挙。 その直前に、7・25テレビで面白おかしく何回も何回も報道される相撲取りのサッカーの映像。 横綱朝青竜の仮病を,さも事実として断定するコメンテーターとマスコミ各...

津軽三味線の話

 この記事は一月以上も前に予定していた話であるが,これまたとても後回しになってしまった.ただし,初めにはっきり言っておくが,この記事は『自慢話』である.従って,人の自慢話を読んだりするのが嫌いな人は,続きを読まない方がいいです,すみません. 昨年の4月...

私の猫遍歴3

3.チャコの時代2  チャコの話がもう少しある.晩年はかなり悲惨なことになった.我々もどうしてなのかよくわからないのだが,まあ,とにかくエピソードの続きを. ・確かまだ高校生の時のはずで,春の二月か三月か四月だったから,高校2年の終わりから3年の初めに...

木を見て森を見ない ~「酸素自給率」のこと

 以前、バイオ燃料の話題をあげたあと、コメントを頂いたり、よそでコメントしたりしたのも含め、おさらいを。先に結論を言えば、「我々の吸ってる酸素は、森林が作り出したものではない」ということ。 地球上に存在する「炭素原子」の数は限りがあり、それが、「単体」...

橋下氏 最年少知事誕生!38歳

こんばんは、マツケンです。今日は選挙!大阪知事に橋下氏当選・・・弁護士、タレント、の橋下氏 若干38歳で大阪知事になってしまった。前知事の太田氏、「政治とカネ」で批判を浴び出馬を断念してしまった、橋下氏も出馬の時にはいろいろと言われましたが結果、182

朝青竜と橋下と

1月20日の日曜日に、見たくない不愉快なことが二つも続いた。 朝青竜と白鳳との相星横綱決戦で盛り上がり、その取り組みを日本人の三人に一人以上が満たそうだ。 マスコミ各社では異口同音に、がっぷり四つに組んだ横綱同士の力相撲を手放しで賞賛する。白鳳の優勝と相...

地球の温暖化は止められない

いまやどちらを向いても「CO2排出削減」の大合唱だ。それ自体に反対するつもりも無いし、結構なことだとは思うが、いかんせん性根がひねくれているので、世の中全体が一つの方向に進もうとするのは気持ち悪い。ちょっと違うことを言ってみたくなる。

「続・夫婦善哉」の未発表原稿

1月27日のETV特集は面白かった。 禁じられた小説~7千枚の原稿が語る言論弾圧~ という番組タイトルだった。

Itpro expo 2008

ビッグサイトで開かれているItpro expo 2008にに行った。 KDDIなどが作ったワイアレスブロードバンド企画のワイマックスの話を聞いた。

岩国と京都に春を!

岩国と京都の国に抗う無党派候補のホームぺージから紹介します。

鬼平こと長谷川平蔵

昨夜のその時歴史は動いたは鬼平犯科帳の鬼平こと長谷川平蔵

ノーベル平和賞の胡散臭さ。ゴアはインチキ臭い。

1973年のノーベル平和賞はベトナム戦争終結のためのパリ和平協定に調印したキッシンジャー米国務長官。 平和賞受賞のべトナムのレ・ドゥクトは同時受賞を拒否して、ノーベル賞受賞を辞退。 この翌年が、すべての新聞記者を締め出して、誰もいない場所で辞任会見を開

若者は「母べえ」を受け入れるか

映画「母べえ」を見た。 終わった後に隣の妻も回りのみんなも泣いていた。 私もウルウルしていた。

京都市長選速報(残念!中村氏は惜敗

京都市長選速報(残念!中村氏は惜敗 まことに残念だが中村氏は惜敗となった。 まこ

「九条」を輸出するー 講演と交流の会

小生の参加するファスレーン365日本実行委員会と非暴力平和隊・日本が共同で講演と交流の会を行います。 テーマは何と【「九条」を輸出する です。

未来から見たい

今夜の金八先生は家路でラジオで聞いた。

啄木の鉄道

今朝の日経の最終面の文化欄に「鉄路の啄木、追跡の旅」という北海道の在野の啄木研究家の太田幸生さんの文章があった。 鉄道と啄木をテーマに調べている。

「九条」を輸出するー核廃絶運動と非暴力の紛争介入ー講演と交流の会

明日3月1日(土)いよいよ「九条」を輸出するー核廃絶運動と非暴力の紛争介入ー講演と交流の会行われます

米軍ファントム九大墜落40周年記念フォーラム

米軍ファントム九大墜落40周年記念フォーラムの案内を頂きました。 九州大学にファントムが落ちてもう40年経つのですね。 私は高校生でしたが受験勉強の中でびっくりした記憶があります。

「ネット名誉既存」で新判断

「ネット名誉既存」で新判断が出た。 ラーメン店へのホームペーへの書き込みが無罪とされたものです。 ネット上の書き込みをめぐる名誉棄損で無罪とされたケースは初めてという

原口一博さんありがとう!

「九条」を輸出するー講演と交流の会

検索エンジンは脳の夢を見る

爆笑問題のニッポンの教養の3月4日は興味深い内容だった。 それは検索についての新技術だった。 それを作ったのは国立情報学研究所の高野明彦氏

インターネットは性善説?

インターネットは性善説の上に立っていると思う。 全ては個人の自由の上に立っている。

来週担任復帰はなるのかな?

今夜金八先生はある事件で担任を降ろされる。 しかし3年B組のみんなが活躍する。 予告編によると来週はもっと目に見える形で活躍するようだ。

見つかる.jp

レコメンドエンジンというものがある

私が一番きれいだったとき

今夜の金八先生が終わった。

キャノン6000人直接雇用(\"労働者派遣法\"の即時撤廃を)

\"労働者派遣法\"の即時撤廃と\"男性30歳以上正社員転換促進法\"早期成立を

この無駄な橋を辞めれば「後期高齢者」からお金を取る必要はありません。

政府はその5全総に代わる新たな「国土形成計画」を3月中に閣議決定するのです。

九条」を“輸出”しよう 核廃絶など進める集会が東京で

janjanに投稿した記事が掲載された。3月1日、東京・三田のキリスト友会東京月会(クエーカー)会堂で開かれた「『九条』を輸出する―核廃絶運動と非暴力の紛争介入―講演と交流の会」の報告です。

イラクに平和を!(開戦5周年に)

「イラクに暮らし」てという話をしたことがあります。

 | HOME | 

 
プロフィール

愚慫

Author:愚慫
“愚樵”改め“愚慫”と名乗ることにしました。

「空論」は相変わらずです (^_^)

      

最近の記事+コメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

QRコード
QRコード