愚慫空論

『秒速5センチメートル』


『君の名は。』は、まだ観ていません。

観てみる心づもりはあります。
おそらく、今年中には観ることができるのではないかと。
楽しみにしています。

映画館に出向くほどには、期待はしていないんですけどね。


というわけで(何が「というわけ」なんだかw)、
同じ新海誠監督の『秒速5センチメートル』を観てみました。



僕はこういう作品、きらいじゃないです。

断絶と哀愁。

アタマデッカチなものであれ、なんであれ、
 切断されたものを繕い直そうとするのは、人間の性(さが)なんだと思います。

愚慫的な言い方をするなら、人間は霊的な存在だから。
自己の中にある幻想を、あるいは虚構を、
 幻想であるとは知ってはいても、断ち切れることができないところがある。

その断ち切れなさを「純粋」だと言ってみたりする。


「疎外」という現象に対する「慈しみ」という反動もまた、「純粋」という形容をするのにふさわしいものでしょう。
ただ、こちらの場合、「純粋」だけでは足りないものも感じますが。


『秒速5センチメートル』は、純粋に「純粋」です。
 言い変えれば、青臭い。

それはそれで、いいと思います。
エンターテイメントとして楽しむ分には。



せっかくですから(なにがどう「せっかく」なのか、わけがわかりませんがw)
少々嫌らしい見方も披露しておきます。

(全編を視聴していることが前提。1時間ほどの作品)

この作品が醸し出す「哀愁」の正体というか起源は、じつは「違和感」なんです。

小学6年生の男女が別れを惜しむ。
その惜しみ方が、なんというか、おませさんなんですよ。

『秒速5センチメートル』は3編にわかれているんですが、
その第一話が小学生のときの話。
そのラストが、『北の国から ’87初恋』を彷彿させるようなシーンです。
ど田舎で、雪の中で、誰もいない物置小屋で、ふたりで一晩を過ごすという。

その情景を縁取るのは、尾崎豊の『 I Love You 』でした。



『 I Love You 』には悲壮感がありますが、
 『秒速~』のほうにはそういう趣がなくて、
  むしろ、希望、期待がある。
「成長」への。


その期待は第二話で裏切られてしまいます。
主人公の「成長」は、期待に呪縛されていく。

「呪縛」を助長するのが、第二話でのヒロインなんです。
悲しいことに。

主人公もヒロインも、純粋なんです。
過剰に。

どちらもキャラも、純粋さへの感受性が高いんです。
共に高いから、純粋が過剰になっていくことを止められない。


この作品のクライマックスは、第二話の終わり。
ロケットの打ち上げシーンです。
「秒速5センチメートル」という言葉の意味も絡んでいます。

第一話の冒頭、桜の花びらが舞い落ちる速度が「秒速5センチメートル」と提示されます。
第二話の途中に、ロケットが運搬されるシーンがあって、その速度もまた「秒速5センチメートル」。
そのロケットが、
 過剰な純粋と、
  ごく自然な男女の欲求の間で
   揺れ動く心理描写のシーンの中に、
    割って入る。
ロケットは期待の象徴です。

非常に技巧的なのに、しかも技巧を感じさせない演出。
憎いヤツだと思います。
新海監督。


第三話はあっけなく終わります。
主人公の純粋が、過剰な「おませ」だったということが暴露されてしまう。
なんの展開もなく、ただそれだけ。

憎いのは、そこに過剰で純粋な歌を被せてくるところ。
予告編でも出てきています。
山崎まさよしの『One more time,One more chance』ですね。



このチョイスは見事だと思います。
『秒速5センチメートル』という作品が、
『One more time,One more chance』のプロモーションだと思ってしまうほど。


もしかしたら、この『秒速5センチメートル』は、
エンターテイメントの純粋形に近いのかもしれません。

・過剰さ。
・過剰さの隠蔽。
・隠蔽を不自然に感じさせない技巧。

この3つの要素がシンプルに、かつ高い品質で詰め込まれています。

エンターテイメントを楽しむことをできるのは、
 そもそも「人間」が、過剰なものを持ち合わせているからでしょう。
  その過剰さを上手に隠蔽してやると、気分が良くなる。

気分よくするのがエンターテイメントの使命ですよね。


『君の名は。』
 楽しみです。

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