愚慫空論

『日本のいちばん長い日』


今日は朝から、『日本のいちばん長い日』を観てみました。リメイク版です。



「日本のいちばん長い日」が昭和20年8月15日であるのは言わずと知れたこと。この映画を今日観たのは、そういう意図があったわけではなくて、諸々の事情でそうなっただけの偶然ですけどね。(^_^;)

まあ、なんというか、滑稽な映画です。誠実に「滑稽」を描いた映画――と僕は受け取りました。
そういう感じを受け取ったのは、もしかしたらリメイク版だからかもしれません。原作未読、最初の映画も観ていないので、この感触に自信はないけれども、滑稽ということそのものに間違いないし、そう受けとめてもいいと思います。そのように受けとめるべき時間がすでに経過したと思います。


主役は役所広司演ずる阿南惟幾陸軍大臣。このキャラクターについては、特に言うべきことなし。あるべきところにあるべきようにある。そのことは、年配のキャラクター全般に言えること。

昭和天皇の役回りについては、別の意味でなんとも言えませんww

個人的に興味を惹かれたのは畑中健二陸軍少佐。“使命”だとか“七生報国”なんてセリフを吐くこの人物は、「からっぽ」なんです。心の中が。大袈裟な大義に身命を賭して、そのからっぽを埋めようとする。


僕がそんな風に感じるのは、僕自身がそういう人間だからです。
僕はたまたま戦後に生まれ、自身の「からっぽ」に気がつく機会があり、また「護符」にも恵まれてなんとか生き長らえることができていますが、時代が時代で、軍隊のようなところに所属してそれなりの責務を負うことになってしまえば、この畑中少佐のような生き方になっただろうと思うんです。

自身の【信念】に盲目的に忠実に。周囲に迷惑を及ぼすことを省みず。というより、まったく気がつかず。【大義名分=信念】だから。畑中少佐もアスペルガー気質だったんじゃないかな――? と思ったりします。


僕が観るところ、この物語の〈クライマックス〉を演じるのは主役ではないんです。この畑中少佐なんですね。だから、本当の主役は畑中少佐と言えるのかもしれません。

畑中少佐のグループはクーデターを起こします。当時の陸軍の「空気」を体現し、実現しようとする者たち。すなわち本土決戦です。が、それは天皇の意志に反する。天皇の意志に反してでも自身の【信念】に殉じようとする者たち。

昭和天皇の、いわゆる「玉音」というやつが録音される。その録音原盤を彼らは奪取しようとして放送局を襲います。目的はもうひとつあって、自分たちの【信念】の宣伝です。「玉音」放送を阻止し、自らの【信念】を放送させるのが目的。

が、原盤は放送局にはなく、宣伝をしようと放送局員を脅迫するも、放送局員の反抗にあって電源を落とされてしまう。電源が落ちた暗い部屋の中で、ひとり自らの【信念】に基づいた決起文を読み上げる――。

「滑稽」なこの物語の中でもっとも滑稽で独りよがりなシーン。独りよがりが露わになる〈クライマックス〉です。



時代が経過したと思うのは、もはやこのよう暴力的「独りよがり」が反社会的な振る舞いだということが認知されるようになってきた、それどころか、暴力的にそうした「独りよがり」を抑圧するようになってきたのではないか、という点です。現代なら、畑中少佐のような人物は「コミュ障」認定されるのではないか、という気がします。

「コミュ障」などという烙印は、もちろん良くないことです。とはいうものの、「コミュ障」が滑稽で巨大なな迷惑をかけてしまうことと比べれば、まだマシといえるかもしれません。

阿南が演じる役回りは、「コミュ障」にぴっぱられる「空気」を変えること。史実はどうか知りませんが、その点、畑中少佐のキャラもそうですが、少なくとも映画のなかでは、そうです。畑中が体現する「空気」は惡で、阿南が変えようとした「空気」――これが昭和天皇の意志だというところが疑わしいと思うのですが――正義という構図があるから、阿南は主役ということになるんだけど、それは裏から見れば畑中が主役ということです。

阿南たちは文字通り“懸命”になって「空気」を変えた。そうしなければならないくらい、「空気」は強固なものだった。それから比べれば、「コミュ障」ということでそうした「空気」の芽を未然に摘んでしまうのが現代の社会だとすれば――。

いえ、これはこれで、別種の「空気」を生みだすだけですね。


ただ、現代の社会でも、戦前のような「空気」が生き残っている場所があります。政治の世界がそう。戦後の「空気」を排除して、戦前の「空気」を復活させようと願望しているところ。政治の世界の住人のみんながみんなそうとはいわないけれど、現在の首魁はそういう人で間違いなさそうです。


さて、いつものように余談ですが、畑中少佐は、現代のキャラでいえば、碇シンジになるんだろうと思ったりします。


シンジは弱者の位置に置かるので「逃げちゃダメだ!」だけど、これが畑中のように強者の位置なら「七生報国」になるでしょう。

で、『エヴァ』の庵野監督は『シン・エヴァ』をほっぽり出して『シン・ゴジラ』を作ったのですが(未視聴ですが)、どこかの記事で読んだところによると、『シン・ゴジラ』制作に当たって、この『日本でいちばん長い日』を参考した
とのこと。これが本当なら、面白いと思います。

だとすれば、もし庵野監督が『シン・日本でいちばん長い日』を制作するようなことになれば、「畑中シンジw」が主役になるでしょうね。その場合「いちばん長い日」は、昭和25年8月15日ではなく平成23年3月11日でしょうけど。果たして畑中は誰になるのか――想像するだけで、面白い。

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