愚慫空論

貨幣価値説vs人間価値説

【問1】

全財産として1万円を所持している人物Aと、100万円を所持している人物Bとがいたとする。

人物Cが、作品Dを制作した。AとBは、Dを所望して、それぞれ5千円で譲って欲しいとCへ申し出る。

Cは、DをAに譲るべきか? Bに譲るべきか?


常識的な価値観、すなわち貨幣価値説で判断するならば、A、Bが提示した5千円は、同価値。なので、Cは、これだけの情報では判断を付けることができない。

ところがCは、Aは貧乏だが、Bは金持ちだという情報も所持している。

Cが今回の売買を通じて、より多くの貨幣を得ようと目論むならば、つまり自身の行動を貨幣価値説に基づいて判断するならば、Bと契約する方が有利であろう。

Cは、Aとの縁か、もしくはBとの縁を選択できる立場にある。どちらの縁を選択するのが多くの貨幣獲得へ有利かと考えれば、多くの貨幣を所持しているBとの縁を持つことが有利だと判断するのは合理的だ。


【問2】

全財産として1万円を所持しているXと、100万円を所持しているYがいたとする。

Zがいて、XとYは、Zと結婚したいと希望した。婚姻の申し込みに、それぞれが5千円の贈り物をした。

Zは、Xに嫁ぐべきか。 Yに嫁ぐべきか。


Zは、X、Y、それぞれの財産についての情報を所持している。

Zは、貨幣価値説に基づいて行動するならば、Yと結婚するのが合理的である。
人間価値説に基づいて行動するならば、Xと結婚するのが合理的である。


人間価値説を定義。

人間そのものに価値があるとする考え方。貨幣を価値の表現のためのツール。


人間価値説に立つと、XとYは同価値。Xは、自分の所持する貨幣の1/2でもって、Zへの贈り物を表現した。Yは1/200。 

Zは結婚において、貨幣価値説を選択すべきか。 人間価値説を選択すべきか。 

貨幣価値説を選択した場合、Zは社会のなかで有利に暮らすことができる可能性が高い。社会システムは貨幣価値説で駆動しているから。

人間価値説を選択した場合、Zは幸せに暮らすことができる可能性が高い。

なぜそうなのかを説明する言葉が思い浮かばない。ということは、「人間価値説⇒幸せ」の関係が人間にとって根源的である可能性が高い。


人間価値説が根源的であるにもかかわらず、人間が営む社会システムが貨幣価値説で駆動する理由は、「信用」にある。人間は複雑な関係性を取り結ぶ。貨幣は複雑性が収斂した極限なので、誰もが信用することができる。

複雑な関係を処理するには大きな処理能力が要求される。人間同士の複雑な関係性は、貨幣を介すると単純なものに変換される。単純なものを処理するのは、小さな処理能力しか要しない。小さな処理能力で済むことが「信用」である。

しかし、人間は小さな処理能力で処理されることに幸せを感じない。大きな処理能力が費やされていることに悦びを感じる生き物。この悦びは幸福感である。

人間は大きな処理能力を持つ生き物だが、無限ではない。有限な処理能力で処理できる範囲が、社会である。処理能力が小さくて済む貨幣を介すると、「大きな社会」を構築することができる。現代社会は「大きな社会」である。

「大きな社会」に適応するというのは、有限な処理能力を薄く広く使うのに長けることである。「大きな社会」に適応するほど、一つの対象に大きな処理能力を費やすことが困難になっていく。そうやって、誰も幸せにしない社会が出来上がる。


【問3】

現時点で1万円を所持している人物Aと、100万円を所持している人物Bとがいたとする。

人物Cが、作品Dを制作した。AとBは、Dを所望して、それぞれ5千円で譲って欲しいとCへ申し出る。

Cは、DをAに譲るべきか? Bに譲るべきか?


【問1】と【問3】の文面の違いは、一点だけ。「全財産」か「現時点」か。すなわち、スットクか、フローか。

【問3】は、【問1】とは問うている前提が異なる。【問3】の貨幣はストック不可能な貨幣であるとする。たとえば期限付貨幣。Cに支払った後、A、Bにはそれぞれ残金が5千円、99万5千円残るわけだが、この残金は期限が来ると消滅してしまうと仮定してみる。

Cは、人間価値説に立ってAと契約するようが有利か。貨幣価値説に立ってBと契約する方が有利か。


続く。


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://gushou.blog51.fc2.com/tb.php/750-e77338fb

 | HOME | 

 
プロフィール

Author:愚慫
“愚樵”改め“愚慫”と名乗ることにしました。

「空論」は相変わらずです (^_^)

      

最近の記事+コメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

QRコード
QRコード