愚慫空論

自由な魂の、自由な魂による、自由な魂のための 後編

前編を書いて、後編を上手く書けないと思っていたのだけど、突然、書ける気になった。前記事で「ファンタジー」という語を出したら、〈ことば〉が繋がった。

前記事では“地図の上を歩く”というファンタジーについて書いた。ここでいうファンタジーは、“fantasy”の訳語通りの意味。すなわち、途方もない空想, 現実離れした想像, 夢想, 幻想。

しかし、藤浩志さんにおいては「ファンタジー」の意味がいささか異なる。

 (講義)【緊急企画】経済学者・安冨歩と観る藤浩志作品
 「藤浩志のどこが凄いのか? ~かえっこ v.s. 東大話法~」


から、安冨先生の藤浩志さんについての紹介文を再度、引用。。

彼の作品は「わらしべ長者」のように、老松のぬいぐるみや、鴨川の中の鯉のぼり、ゴジラとハニワの結婚式といった学生時代の作品から始まって、彼自身の人生の転がり具合のなかで、人々との交歓=交換を繰り返し、かえっこしながら、どんどん膨らんでいく感じがします。その行き当たりばったりの、波乗りファンタジーの生み出した、お伽話としての作品の数々を、皆さんと楽しんでみたいと思います。


後半の文章。一応、文章としては藤浩志さんと藤浩志さんの作品とが区別され、「ファンタジー」は作品について言っているのだと整理はできる。けれど、文章全体のイメージでいうと、「ファンタジー」は作品にも藤浩志さん自身にも言えるような感を受ける。8/4の講義は、まさにそのような内容だった。

ファンタジーが作品を指すのであれば、それは一般的なファンタジーの語彙からはみ出してはいない。「作品は、途方もない空想, 現実離れした想像, 夢想, 幻想の表現」と言明しても、何らおかしいことはない。ファンタジーと現実とは切り分けられ、作品は表現という形で両者の接点に立つ。しかし、“作品”が“作者”に置き換わるとどうか。作者がファンタジーと現実との接点に立つ。立つとは言っても、作者は作品と違って現実に生きているのである。

こうなると、ファンタジーは現実ではない世界という範疇から少し逸脱している。ファンタジーを生きる人間を介して、幻想の世界が現実の世界に紛れ込んでくる。

ファンタジーの世界を自由な世界というならば、現実の世界は制約の世界である。現実はファンタジーのようには行かない。だから多くの人間、いや、大人は、ファンタジーと現実とを切り分けてしまって、それで納得してしまう。けれども、思い出していただきたいが、私たちが少年少女であった頃は、私たちもファンタジーと現実の世界の両方に跨がって生きていたのである。“地図の上を歩く”とき、それは架空の幻想の世界だったかもしれないが、まぎれもなくそこで生きていた。お人形を抱いておままごとをしているときも、そう。それは小さな世界ではあるが、そう感じるのは大人になった私たちが現在の地平から俯瞰してしまうからそう感じるのであって、当時は自分の世界を精一杯、自由に生きていたのである。

ファンタジーと現実との区別もなく、自由に生きることができる。これを“自由な魂”と呼ぶことができるのだと私は思う。その視点から藤浩志さんを見てみると、「わらしべ長者」のように“自由な魂”の活動がどんどん膨らんでいく感じがする。「お伽噺」は作品ではなく、むしろ藤浩志さん自身だ。

では、そんな藤浩志さん自身の作品は、従来の意味で作品と言えるのか。言う必要は無い、と私は思う。鑑賞する者がそう言いたければ言えばいいし、そうでないと思えばそれでいい。

(関連して思い出すのは、こちらの記事でとりあげた「じょうぶ学園」の知的障害者たちの作品。知的障害者たちもまた、ファンタジーと現実の接点に生きているように思えるし、いわゆる“健常な大人”が制約しなければ、彼らの作る自由な作品は、作品と言っていいのかどうか判別のつかないようなものになる。しょうぶ学園のHPで紹介されているのは、そういった作品の中でも、作品らしいもののようだ。)

さて、話の続きとしては、藤浩志さんの経歴を紹介することで作品「藤浩志」に迫るということになるのだろうが、それは省略。私としては、「自由な魂」というものがどういったものかを自分なりに綴ることができれば目的は達したわけで、それからすれば、既に目的は達したように思う。

というわけで、終了。

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