愚慫空論

『賢者の非常食』

賢者の非常食当ブログでは取り上げたことはないのだけども、著者の小泉武夫氏は我が家では馴染みの人だ。もちろん個人的には知らない。小泉氏には数多くの著作があるが、それらが馴染みだということ。要するに家内が読んでいるのである。

家内が読む本の分野は限られている。ほとんど食べものに関するものしか読まない。しかも料理のレシピ本が多い。よく読んでいる割には我が家の食卓に余り反映されていないようだが、そういうと「アンタがわかってないだけ!」とお叱りを頂戴する。まあ、そうかもしれない。料理の細かいレシピなど、私にとって関心の埒外である。

そんななかで小泉武夫は、ふたりの関心が交わるほんの僅かな部分に位置する貴重な存在である。

「非常食」とタイトルされているところから察しが付くとおり、この本も昨年の大震災を契機に書かれた「震災本」の一種といえる。「緊急時に備えて、これこれこういった準備をしておくといいですよ。」あるいは「緊急時には、こういったやり方がありますよ」。本書にもそうした How to 的な要素はあるが、そこには留まらない。平常時の「常食」と緊急時の「非常食」とが区別されずに、常食の延長線上に非常食があるという考え方に立っている。“賢者の”と銘打つだけのことはある。

本書の中心となるコンセプトは「医食同源」。よい食べものを摂取することは免疫力を高め、気力を養う。その重要性は平常時も緊急時も変らない。明確な主張だ。

そんな著者が警告しているのが、日本人の食生活の変化。いや、「乱れ」と言っておこう。

私の研究テーマのひとつに「食と民族」があります。そのため私は、これまで世界中を旅して、いろいろな民族の食生活を見てきました。そこでわかったことは、長い歴史や文化のある国、フランスやイギリスやイタリアなどは、ここ三〇〇年間ほとんど食生活が変っていませんが、文化のない国はどんどん変わってきているということです。歴史がある国は、一貫して民族食を食べています。中国も変わっていませんし、韓国は最近若者がファーストフードを好むようになりましたが、まだそれほど民族食の変化はありません。ところが歴史も文化も世界に誇れる日本は、ものすごく変わってしまったのです。



そういえば似たようなことをマル檄で宮台氏も述べていたように記憶している。欧州の国々は、社会は変わっても生活スタイルは頑固に変えないというのである。生活スタイルを変えずに守っているからこそ、社会を変えていくことが出来る。食文化は彼らが守っている生活スタイルの重要な部分を占めることはいうまでもないだろう。

民族食の一番の利点は、私たちの身体が馴染んでいるということである。たとえば、かつては菜食中心の食生活を送ってきた日本人は、肉食中心の欧米人に比べて腸が長い。食生活の欧米化が成人病等の原因になっているのはよく言われていることだけれども、非常時においてはそうした身体と食事にミスマッチは平常時よりも大きく影響する。身体にあわない食物は消化吸収に余分なエネルギーを要するので、少しでもエネルギーを温存したい緊急時には向かない。理屈であろう。

本書はそうしたコンセプトに基づいて、非常食品や非常食レシピが紹介されている。非常食品だと20種類。

 1.ご飯 2.餅 3.高野豆腐 4.湯葉 5.麩 6.納豆 7.干し芋 8.切り干し大根
 9.ドライフルーツ 10.干物 11.鰹節 12.ヨーグルト、チーズ 
 13.パンと乾パン、ビスケット 14.梅干し 15.味噌と即席味噌汁 
 16.嘗物 17.漬け物 18.キムチ 19.佃煮 20.羊羹

一見したところアナクロなものが並んでいるが、これが「日本人」ということなのだろう。

それともうひとつ。本書で注目したいのが、放射能と発酵食品の関係についての記述。やはり発酵食品、特に味噌は放射能対策として有効らしいのである。動物実験でその有効性が確かめられていることも紹介されている。

牛乳を飲んでも、大豆を食べてもそこには身体と牛乳・大豆との関係しか成立しませんが、発酵食品を摂ると、味噌でもヨーグルトでも納豆でもキムチでも、そこには身体と食品の間に別個の生命体が介在します。納豆であればナットウ菌、ヨーグルトであれば乳酸菌という生命体が身体に入り、腸内で増殖しながら傷んだ細胞を修復し、放射性物質を吸着して体外に排出する可能性が高いのです。


消化吸収という身体機能でも「すべてを自分がしているわけではない」ということのようだ。

コメント

発酵食品

東日本の人々がよく食した糸引き納豆は、世界でもごく限られた地域での食べ物なんです。
畑の肉といわれる大豆が原料で植物性の蛋白源として欠かせないとは誰もがいいますが、違うんですね。
納豆は大豆とは違います。大豆は発酵によってまったく別な食べ物に変化しているんです。
大豆より3倍もビタミンB2が多く、大豆には無い酵素をもっています。
このため納豆に含まれる蛋白や脂肪を完全に消化するだけでなく、一緒に食べた食品の消化も助けます。
チフス菌を殺す抗生物質的効果もありますし、
もちろん放射性物質を体外に排出する働きもあるといわれています。
麦飯一杯、味噌汁一杯、一つまみの納豆漬物少々の食事を見れば今の人たちなら
カロリー計算から栄養価を云々する人たちはなんて貧弱な欠陥食事と見なすでしょうが、
そうじゃやないのですね。発酵食品には栄養以上の何かが含まれているんです。
漬物は塩で漬けた食品と考えられていますが、塩は味をつけるだけで
過度発酵を抑える働きをさせるために加えるんです。漬物は発酵食品なんです。
市販されているたんなる塩漬けタクワンとちがって、タクワンは大根と塩と糖で漬け込んでから、
最低3ヶ月かけないと発酵してタクワンのは生まれ変わりません。
タクワンもまた大根とはまったく別の食品なんですね。

こんにちは。

トルコも日本に負けずとも劣らぬ保存食大国です。
乾燥してるので発酵食品よりも乾物のほうがちと多いです。

ヨーグルトはもともとトルコ語で、遊牧民の食べ物でした。肉をヨーグルトに漬け込むと柔らかくなり、味がまるくなります。また、水で溶いて塩味をつけて牛乳のようにのみます。
小さい赤ちゃんにいきなり牛乳をあげると消化不良をおこし命に関わる酷い下痢を起こしたりしますが、ヨーグルトならなんとか食べさせられます。やっぱり全く違う食品になるのです。

街の漬物屋にはスタンドがあって、漬け汁をコップで出してくれます(お通しは硬くなったパン)。酢漬けなので塩は少なく飲んでもけっこう美味しいです。肉料理の消化を助けてくれます。

夏の終わりに乾燥野菜、果物はもちろん、ジャムや唐辛子ペーストも天日で水分を飛ばしながら数日かけて作ります。長い冬の間、日光を食べ物から吸収します。

他にもいいものがいろいろあります。でも国民はあまり健康ではないのです。暮らしが変わりすぎたようです。

日の丸弁当

主食と副食という概念を外国人はもっていなくて、
すべての食品から満遍なくカロリーや栄養を取るという考え方ですね。
西洋の栄養学ではどの食品を取り出しても、その食品自体に、
カロリーと栄養がバランスよく含まれていなくてはならないと。

そういう目で日本の日の丸弁当を見たら、
なんて低カロリーで野蛮なの!というでしょうね。

大量の白米と副食の一粒の梅干。
これが胃の中入ると、この一粒の梅干が99パーセントの米を中和し、
米のカロリーは食べたほとんどが吸収される役割を果たします。
つまり日の丸弁当は食べてすぐ、エネルギーに変わる、労働のための理想食です。

ただカロリーは取れるがビタミンの種類が不足です。
でもビタミンは毎食つねに一定の量を摂取しなくてもいいので、夕食時にそれを補う。
今必要なカロリーを摂るという意味では、
日の丸弁当は、近代的な進んだ智恵なのですね。

マンガ少年さん、あやみさん、春風さん

・マンガ少年さん、春風さん、ようこそ。
 あやみさん、いつもコメントありがとうがございます。

お三方まとめてのコメント返しで失礼します。

皆さん、いろいろと知恵と知識をお持ちですね。この場で披露していただいて、ブログ管理人としては光栄です。

関西出身の私は小さい頃は納豆は苦手でしたが、今は大好物。アンモニア臭い方がよかったりして。タクアンはもちろん。

ヨーグルトがもともとトルコ語だとは初耳です。もっともヨーロッパの文化はイスラム圏からの輸入物が多いわけですから、意外なことではありませんね。トルコの街の漬物屋ですか。興味がそそられますね。是非ともあやみさんのブログで紹介してください。

日の丸弁当とはまたアナクロですが、栄養という面でいえば仰るとおりのようですね。私は仕事では弁当は必携ですが、でも、日の丸弁当はまだ未経験です。我が家では紀州南高梅を知り合いの梅農家から毎年取り寄せて、キチンと梅干しを漬けているんですけどね。今度やってみようかな。でも、ちょっと日の丸弁当では寂しいと思ってしまうところもある。奢った現代消費文明に毒されているのでしょう。

叡智

震災、津波、原発の被災で避難所、仮説住宅と点々して
いまだに日の丸弁当にわずかの副食ですが、
古代から日本人は味覚や内臓感覚を鋭敏にして
「智恵」を磨いて生きてきたのですね。
世界史の中に、日本が登場するのは、
唐の制度を導入してきた7世紀くらいでしょうから、
それまでは進んだ文明を持つことなく
世界からは遅れた生活をしてきたのでしょうが、
その分だけ日本人は内臓感覚を磨いたり、叡智を少しずつじっくり
積み重ねてきたのですね。
日の丸弁当や宮澤賢治の「叡智」には心身を
ずいぶんと決定的のところで助けられてきました。

Re:叡智

・春風さん、おはようございます。

そうでしたか。大変な思いをされました。今もされているようです。先のコメントではそのような「影」は全く見受けられないので、ちょっと驚きました。

日の丸弁当や宮澤賢治の「叡智」には心身を
ずいぶんと決定的のところで助けられてきました

なるほど、なるほど。そうした「叡智」をちゃんと身に纏われていたわけですね。
私も春風さんのようにありたいものです。

「医食同源」



この言葉を目にすると、「美味しんぼ」というマンガが頭に浮かびます。そのマンガでは、「医食同源、食べることは、生きること。では今の日本人はどうだろう。添加物だらけのたくあん、作り物の惣菜。これのどこに命があるのだろうか。」とかいてあります。僕は中学生なので、付き合いでファストフードなどを食べたりもします。でもどこか物足りないんですよね。そんなとき、祖母が作る肉じゃがとか、漬け物とか……そんな「普通」の、でも今では「珍しくなりつつある」惣菜をたべると、なんかホッとしたりします。そんでご飯3、4杯とかたべたり。笑。そうゆーのを、今の日本人はわすれたりしてない?とか思います。
(14年しか生きてないのに生意気)
あ、ぼく梅干しも大好きです。たべたい!笑

『美味しんぼ』は101巻が圧巻

・rd-4645さん、おはようございます。

へえぇ、ファストフードが物足りない、と。中坊のくせにナマイキな! 笑。

生意気というのはもちろん冗談ですけど、ちょっと本気混じってるかも? いずれにせよ恵まれていると思います。いま、食育なんてのが流行だったりしますけど、味覚は環境で左右されるものだし、子どもは環境を選べない。にもかかわらず、その環境の価値をわかっている。これはやっぱり生意気だ。(^o^)

せっかくだからもっと生意気になりましょう。梅干しが美味しいよと、友達の前で怯まず言えるくらいに。日の丸弁当を学校へもっていきますか?

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