愚慫空論

『逆襲のシャア』

前回、『「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱』という本を参考に、アトム&ジョー世代からワンピース世代までを概観してみた。ここで語らなければならないのは、なぜそれが『逆襲のシャア』につながるのか、ということだ。

ワンピース世代は既にニュータイプであると前回書いた。これは『「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱』でも指摘されていることだ。だが、このニュータイプの形は、ガンダム世代が望んだ形とは違ったものになってしまっている。ずっと小さいのだ。『逆襲のシャア』の結末は、ニュータイプの共感力がガンダムという機械を触媒に物理的なパワーを発揮して、シャアが企てた地球への小惑星を回避するというもの。ここには〈システム〉を超えた〈世界〉への憧憬がある。それはガンダムの世界設定から予め予期できたことではあったが、〈世界〉へのアクセスがニュータイプであるために必要だという提示だ。

だが、ワンピース世代のニュータイプはどうなのだろうか。彼らには仲間へのアクセスは必要だろう。だが、〈世界〉へのアクセスは必ずしも必要でないように思える。ここのところがシャア・アズナブルと重なるのである。

ニュータイプはガンダムの物語の鍵だが、これには2つの捉え方がある。1は、新たな才能と捉えるもの。ギレン・ザビがその典型。2.は精神的(宗教的な)革新と考えるもの。シャアの父親、ジオン・ダイクンの捉え方だ。アムロもこの系譜になる。

シャアも本来ならば2.の系譜へ連なるべき存在だった。しかし、ザビに父親を殺され、母となる(かもしれなかった)ララァも失った。そのために、一時はアムロと共同戦線を張るも、結局、1.へと堕ちた。父親を希求したクエスを才能として扱い、地球を2.への革新を拒む既得権益とみなして破壊しようとした。〈世界〉へアクセス出来なかったのだ。

対してアムロも、父に棄てられ母は自ら棄て、ララァも失う。だが、逆に失ったことを〈世界〉へのアクセスの足がかりにした。2.の道を進んだのだった。

はたしてワンピース世代以降のニュータイプたちは、どちらの道を進むのだろうか。『「ワンピース世代」の反乱』の予測によるなら、1.へと進みそうな気配である。ソーシャルネットワークへのスキルなどは、ニュータイプとしての才能であろう。ただしここではフクシマの影響は考慮に入れられていない。

ヨコに〈絆〉を展開させているという点では、アトム&ジョー世代とワンピース世代は変らない。大きく違うのはその規模だ。アトム&ジョー世代は、第二次大戦で崩壊した日本という〈システム〉を仲間と同一視して再構築を目指した。原子力という〈世界〉へのアクセス手段は、〈システム〉再構築という大きな目標から派生してきたものだった。そして現在、そのアクセス法は誤りだったということが明白となった。

もっとも、明白となったにも関わらず見えない者も少なからずいる。それは未だ〈システム〉構築の実績に溺れている者。あるいは〈システム〉に過適応してしまった者たちだ。【良心】的な人たちである。

ワンピース世代はもとより〈システム〉にあまり関心がないように見える。彼らは彼ら自身の個を確立するのに〈システム〉を必要としない。〈システム〉が彼らとその仲間を抑圧するなら闘うという、どちらかといえば消極的な構えである。実はこの構えは、江戸時代のムラの構えとよく似ているのだが、残念ながら現在は江戸時代ではない。そのような彼らに、ガンダム世代はどのように接していくべきか。

答えは出ているように思う。アムロの道を選ぶと示すことである。彼らはガンダム世代のように〈システム〉を必要としないが、その代わりに〈世界〉もまた必要としない。そのような形でニュータイプになった。ガンダム世代は〈システム〉の縛りを脱してニュータイプへと変貌するのに〈世界〉を必要とした。そして現在、フクシマの事故は否応なくすべての世代に〈世界〉との関わり方を問うている。

現段階では、いまだにアトム&ジョー世代が社会の主導権を握っているは事実だ。ゆえに、マスメディアあたりで為される議論は〈システム〉の在り方を巡るイデオロギー闘争にしかならない。彼らの捉え方では、脱原発もひとつのイデオロギーでしかない。ここの積極的にかかわっていくことは、シャアの道だ。アムロの道はそうではない。技術は大いに利用する。だが、技術をイデオロギーの下へは置かない。ニュータイプの力を引き出すために使うのである。

そしてこれは、ガンディーの道にもつながってゆく。ガンディーは機械=技術について、どのように答えたか。

ガンディーはある記者に尋ねられて、こんなふうに答えていたのだ。その記者は、「ガンディーさん、いったい家庭がシンガーミシンを入れるのと機械化された工場とのあいだの、どこで線引きできるんですか」と問うたのである。ガンディーはこう答えた。「ちょうどそれが個人を助けるのをやめて、その人の個性を蝕むところで」と。



コメント

ガンダム世代

1965年生まれの私は、ガンダム世代でいいですか?
アトム、ジョー、ガンダム、エヴァンゲリオンは、みんなスルーしちゃってるんです。女だからかしら?

ワンピースは読んでるし見ているのでわかるんですが、ガンダムは全く見てないので、誰が誰だかさっぱりわからずで、登場人物を少しだけ調べてから読み直しました。
(・・けど、結局複雑でおおまかにしかかわからなかったです。^^;)

私はどれにあてはまるんだろうと考えながら読みました。ガンダム自体の内容はよくわからないけど、
「ガンダム世代の憂鬱」は、私にもあるような気がしました。でも、ワンピースの軽さと楽しさが一番いいな。

それにしても、愚樵さんはアニメも詳しいんですね。
驚きました~~~!

たぶん、女だからでしょう

ゆめさん、おはようございます。

重要な指摘をなさって下さいました。そうです、ゆめさんがスルーしたのは、女子だからでしょう。

私たちの世代では、男子と女子では好みはかなりはっきりと分かれていましたよね。さらに、女子は好みが細分化してましたよね。

マンガ雑誌で言うと、男子は『ジャンプ』『マガジン』『サンデー』などとありましたが(今でもあるようですが)、大抵の者が全部読んでました。全部自分で買わなくても回し読みをしていたんですね。その点女子は、『花とゆめ』『リボン』『マーガレット』など、それぞれの読者間の交流は少なかったように思います。

まあ、男は単純で女は複雑、ということなのでしょう(笑) また、マンガそのものも少女ものは複雑でした。私は高校生ぐらいから少女マンガも読み始めましたが、その複雑さに驚いたことを憶えています。もっとも最初は、花がパッパと散る特有の様式に戸惑いましたが。

現在は、そういった垣根はほとんどなくなっているようですね。『ワンピース』は男女を問わず観ている。また、世代も超えて観られているようです。

それとアニメですが、私もリアルタイムでみていたわけではなかったんです。当時はスルーしていた。中学生くらいからTVを観なくなったんです。ガンダムは友達に連れられて映画を観たことはありますが、TV番組は観なかった。観たのは大人になってからです。アトムやジョーは、子どもの頃でしたから観てましたね。『エヴァンゲリオン』を観たのも3年ほど前です。『ワンピース』はボチボチ鑑賞中。

『涼宮ハルヒ』とか『けいおん!』とか、ネット上で話題になるのはとにかく観るようにしています。あと、中学生の姪っ子に観るべきものを聞いて、観てみるとか。そんな程度です。いや、最近は「その程度」を逸脱しつつあるか...(苦笑)

『けいおん!』はお勧めですよ!

なにかあるんです

コメントの続き。

アニメでも歌でも、それらが広く支持されるのはなにか理由があるんです。当たり前の話ですけど。

TVを観なかったガキの頃の私は権威主義者だった。だからTVも観なくなったんですね。中学生当時、『金八先生』が大人気だったのですが、私は観てなかったので、たのきんトリオを知らなかった。マッチ? トシちゃん? それ誰? という感じでした。いもきんトリオはなぜか知ってましたが。

今はその反動か、権威主義的なものはキライです。宮台センセイお勧めの映画なんか、観ようと思わなくもないですが、ほとんど観ません。こちらだって「なにかある」はずなんですけどね。

少し前にLed Zeppelinを取り上げたりしましたけど、あれだって最近です。クラシック中心だった頃、ブログをはじめた頃もそうだったんですが、見向きもしませんでした。音が気持ち悪かった。鬱陶しい「煩音」でしかなかった。でも、ネット上でですが、そうした「煩音」を寵愛する人たちとお付合いするようになると、その理由を知りたくなってしまうんですね。そうなると「煩音」にしか聞えないことがもったいなくて。

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