愚慫空論

〈システム〉と〈クラウド〉

前エントリーで〈クラウド〉なる言葉を脈絡なく直観的に使ってしまったので、今回は、その追補的エントリー。といって、直観的なのところに何ら変わりはないが。

「クラウド」という言葉は、ネットにアクセスする者なら誰もが目にしたことはあるだろう。「クラウド」はいうまでもなく「雲」の意味だが、ここでいう「クラウド」は「クラウドコンピューティング」というIT技術の呼び名から派生拡大し、現在では、IT技術によって実現されているネット空間そのものを指して「クラウド」と呼ぶようになってきている感がある。

ゆえに、と言ってよいかどうかはわからないが、「クラウド」には明確な定義付けは未だにない。「クラウドコンピューティング」なら明確に定義できるのだろうが、「クラウド」はなかなかそうはいかない。にもかかわらず、ネット空間を「クラウド」と呼び習わす慣習はますます広がりそうな気配。ということは、「クラウド」がネット空間の在り様を的確に表現しているということだろう。

が、私は〈クラウド〉という表現を、ネット空間の意味で用いたのではない。自然を含んだ共同体という〈クラウド〉。ネット空間と自然とはまったく相容れない別世界だが、その在り様は、IT技術の進歩ゆえだろう、似たものになってきている。これはもちろん、私の直観である。

もう少し具体的に語ろう。〈クラウド〉は「不定時法の世界」なのである。

 愚樵空論 『不定時法の世界 (1)』
 愚樵空論 『不定時法の世界 (2)』
 愚樵空論 『不定時法の世界 (3)』
 愚樵空論 『不定時法の世界 (4)』
 愚樵空論 『共同体のイメージ』

〈クラウド〉と対置されるのは〈システム〉である。つまり、〈システム〉は「定時法の世界」ということになる。「定時法の世界」の住人には、“時間は等間隔で刻まれ一定速度で流れてゆく”という信憑がある。これは、時計の普及と軌を同じくして普及した信憑だが、一旦取り憑かれるとなかなか自由にはなれない。「定時法の世界」の住人は、時刻はいつでもどこでも「同じ」である普遍的なモノサシだと思い込んでいる。(「相対性理論」的な話は除くとして。)

対して「不定時法の世界」の住人は、そうした信憑からは自由だ。時刻は相対的なもので、その場所その時、その場の人間関係のなかでその都度決まるものだと思っている。つまり、時刻を定める基軸がない。にもかかわらず、コミュニケーションはちゃんと成立している。このようなコミュニケーションの態様を〈クラウド〉とするのが正確かどうかはわからないけれども、直観的には共通したものがある、と私は思った。そして、「不定時法」的なコミュニケーションの中には自然環境とのコミュニケーションも含まれる。だから〈クラウド〉には自然も含まれる。というより、自然こそがもっとも重要な構成要素だ。

と、いったようなことを念頭に置いて、こちらの動画をご覧になっていただきたい。故小室直樹博士の日本教講義だ。一神教が〈システム〉であるのに対して、日本教が〈クラウド〉であることが理解出来ると思う。


小室直樹 日本教講義 投稿者 chohsuke

ついでにもうひとつ、参考例を。芥川龍之介の『神神の微笑』である。青空文庫から閲覧できる

「事によると泥烏須(デウス)自身も、この国の土人に変るでしょう。支那や印度も変ったのです。西洋も変らなければなりません。我々は木々の中にもいます。浅い水の流れにもいます。薔薇(ばら)の花を渡る風にもいます。寺の壁に残る夕明(ゆうあか)りにもいます。どこにでも、またいつでもいます。御気をつけなさい。御気をつけなさい。………」


孔子も悉達多も、そして泥烏須も日本では土人に変わる。孔子・悉達多・泥烏須は、それらが信奉されている世界では絶対の基軸であり、その世界は「定時法」的〈システム〉世界。ところが、それら基軸も「不定時法」的〈クラウド〉世界へやってきてしまうと、もはや基軸たり得ず土人へと変わってしまう。

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