愚慫空論

頭脳の身体に対する「罪」



ヒトは、アタマとカラダとがなかなか上手くバランスしない生き物だ。

バランスを崩す原因を作るの大抵、頭の方である。アタマは、アタマの快楽を追求するなかでカラダを酷使する。カラダとは筋肉主体の肉体の意味ではない。消化器系、呼吸器系、さまざまな臓器の集合体という意味でのカラダである。ヒトの場合、大抵の臓器の欲求よりも脳の欲求のほうが強い。例外は生殖器系くらいのもの。

たとえば、美食は快楽だ。カラダにとっても、食物を食べ栄養分を摂取することは必要であり、必要を満たされるのは快楽だろう。だが、アタマの快楽は、カラダの要求を容易に超える。自然な要求を超えた負担が快楽であるはずがない。美味しいもの食するのは楽しい。楽しいから食べ過ぎる。アタマの快楽は、カラダの寛容の上に成り立っている。

タバコもそうだ。喫煙で体内に取り込まれるタールやニコチンが呼吸器系にとって快楽なはずはない。だが、アタマはそれを快楽と感じてしまう。ストレスからの解放、依存症状の中和、あるいは虚栄が満たされる。複雑怪奇なアタマは、タバコからさまざまな快楽を引き出すことができる。これは、一面では素晴らしいことではある。

利便性の追求も、間違いなくアタマの快楽追求の一派だ。文明社会に生きる私たちは、さまざまな利器に取り囲まれている。その利器たちは、アタマの欲求を速やかに満たし、さらには拡大する。アタマにとっては欲求が満たされるのも拡大するのも、快楽である。その快楽は膨大なエネルギー消費によって支えられている。

原子力は夢であった。それはもちろん、アタマにとって。原子力を実現すること自体も、生み出される膨大なエネルギーが実現するであろう利器たち――アタマの快楽追求装置――を空想することは、大人ばかりではなく、無垢な少年少女にとっても快楽だった。また一部の利にさとい大人達にとっては、原子力が生み出す莫大な利潤も快楽だった。そして、私たちはカラダのことを忘れてしまった。これからは、そのツケを支払わなくてはならなくなった。

原子力の使用によって私たちが犯した最大の「罪」とはなにか。それは身体が培ってきた叡智をひっくり返してしまったことだ。自然界にも放射性物質は存在する。身体の叡智は、その危険性を上手くやり過ごすよう適応してきた。同時に危険性のない物質は、効率よく再利用するようにした。人工放射性核種は、この身体の叡智を落とし穴にしてしまった。これを「罪」といわずしてなんと言えばいいのか。

アタマが快楽を追求できるのは、寛容な身体があってのことである。身体が寛容でいられるのは、叡智を持っているからだ。アタマの快楽追求はその叡智を台無しにしてしまった。そのツケは、これからアタマの快楽を追い求める子どもたちの無垢な身体が多く支払うことになる。 この理不尽は私たちのアタマが生み出した。それを是正する術を、私たちのアタマは持っているのか。

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