愚慫空論

〈強い絆〉と〈弱い絆〉の平和条約

〈強い絆〉とは何か。 それは〈あの世〉への回路である。

〈あの世〉とは、一般に死後の世界だと解釈される。それは間違いではないが、イコールでもない。生前の世界にも〈あの世〉は存在している。存在しているが可視化することはできない。

〈弱い絆〉は〈この世〉への回路であり、こちらは可視化でき計測可能である。 可視化でき計測できるということは、観察者としての〈我〉が確立しているということでもある。 〈我〉あるがゆえに〈我〉以外の〈他者〉と対比することができる。 また、「生きる意味」は〈我〉あるがゆえに求めることになるのだが、それは〈他者〉との比較では求めることはできない。 〈弱い絆〉をいくら積み上げても「生きる意味」には届かない。

計測不可能な「生きる意味」は、可視化できない〈あの世〉へと繋がらなければ発見できない。
その回路が〈強い絆〉である。

現代は〈強い絆〉が希少になってしまった社会である。計測可能な指標をこの世に蔓延らせ、可視化不能はものを死後の世界へと押し込め、その死すらも隠蔽する。だから逆に〈強い絆〉を求める真摯な者が先鋭化してしまう。カルトである。カルトは〈強い絆〉を妨害する社会を否定してしまうが、現代社会が〈強い絆〉を否定してきたことへの反動であろう。

人間が幸せに生きていくには「生きる意味」を識ることが必要であり、〈強い絆〉が必要である。〈弱い絆〉は必ずしも必要ではない。しかし人間は社会的に生き物である。社会は円滑に営まれるためには〈弱い絆〉が必要とするが、〈強い絆〉はときに社会の秩序を乱す。

〈弱い絆〉は「平和条約」である。〈強い絆〉が引き起こす武力衝突を平和的に解決するための知恵が〈弱い絆〉なのである。「平和条約」のない社会が平和に営まれるはずはない。が、「平和条約」を規定として社会秩序を維持しようとすれば、そこには暴力が必要となってくる。その暴力が〈強い絆〉を侵害してしまう。構造的な矛盾である。

この矛盾を解消するにはどうすればよいか。決定的な解決法はないかもしれない。だが、暫定的な解決法はあるかもしれない。それは「市場」である。

「市場」とは暫定的な「平和条約」を随時随所に取り結ぶ「場」である。今日グローバリズムが社会を席巻しているが、これは随時単一な市場を是とするもの。単一であるために市場への参加資格が制限され、そこへ格差が生まれてしまう。

〈強い絆〉を「市場」にて〈弱い絆〉へと交換することが出来ない者は、「平和条約」を取り結ぶことが出来ない。「市場」参加者が主導する社会が押しつけてくる「不平等条約」を受諾するか拒否するか、二者択一を迫られることになる。〈強い絆〉か〈弱い絆〉かの二者択一である。この社会の中で生きようとすれば、選択肢は受諾しかない。

このような社会は、「平和条約」は随時結ばれるかもしれないが、随所では結ばれない。ゆえに「平和条約」は随所に普及せず偏在することになる。社会は、単一の市場で結ばれる偏在した「平和条約」を規定とすることで秩序を構築しようとする。それがグローバリズムであり、市場原理主義である。これは合理的な社会であるかもしれないが、幸せな社会ではない。

幸せな社会では、誰もが〈強い絆〉をもち、それを順当に〈弱い絆〉へと交換できなければならない。それには誰もが「平和条約」を結べるように、「市場」が随所随時に開かれていなければならない。そのような社会では「平和条約」は、いつでもどこでも、常に暫定的である。暫定的であるがゆえに決定的に規定されることはない。〈強い絆〉と〈弱い絆〉との交換は、決定的な規定の下ではうまく行なわれない。

〈強い絆〉と〈弱い絆〉の交換が円滑に行なわれることは、「あの世」と「この世」が繋がるということであり、個々人の「生きる意味」と「社会的な役割」が結びつくことでもある。「幸せ」とはこのような状態を指して言うのであり、「幸せな社会」とは、誰もが「平和条約」を結ぶことができる社会のことである。

随所随時に「市場」を開催することができるだけの社会インフラは、すでに整っている。

コメント

お久しぶりです

最近、わたしもこのエントリーで愚樵さんが追求している問題を、日常生活でひしひしと感じるのです。
強い絆とかあの世というのは、目に見えない闇の世界ですよね。そんなの見えないよ!と、言われておしまい。相手にされないことが多いのです。
心がどうしたって?そんなモノ当てにならない、と言われればそれまでです。
闇の世界を感じる感性のまったくない人たちと話をするのは、とても孤独を感じます。

・Naokoさん

生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く
死に死に死に死んで死の終わりに冥し

私、最近、この空海の歌がとってもお気に入りなんです。

闇の世界を感じる感性が全くない人なんていませんよ。人はみな、闇から生まれてきたのですから。

震災後東京電力管内では計画停電なるものが行なわれました。あれはあれで良かったという人もけっこう多い。闇の大切さを見直すことが出来たから。

闇に感応しないのは、闇への感性がないわけではなく、闇に目を背けているから。感性の問題ではなく知性の問題。アタマデッカチになって、アタマとカラダとがひっくり返っているんです。「心の闇」に囚われていると言ってもいいかもしれませんね。闇に目を背けるから、自分の心の中の闇が見えない。また、そんな人だからこそ〈この世〉の〈弱い絆〉に貪欲になるのかもしれません。

そんな人たちとつきあって孤独を感じる必要はありません。孤独だと思ったなら、自分の〈強い絆〉へ立ち返ればいいではないですか。そこで力をもらったら、再び戻ってくればよいだけのことです。

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