愚慫空論

不定時法の世界(3)

(2)からの続き。不定時法の“時間感覚の確立”についてでした。

不定時法の時間感覚 ここでも簡単な例をあげて説明することにします。

甲、乙、丙の3人がいるとします。もちろん不定時法の世界の住人です。「卯」「辰」「巳」・・・というのは江戸時代の時刻法の「一時(いっとき)で、約2時間です(『不定時法の世界(1)』を参照)。右の図は甲、乙、丙それぞれの時間の区切りを表しています。一時(いっとき)の長さが各人それぞれ異なっています。
『不定時法の世界(2)』では試験を例にあげましたが、甲と乙はその試験の受験者であったとしましょう。試験時間は「巳の時」。Aは試験開始の時刻、Bは試験終了の時刻です。甲と乙は同じ試験会場にいて同じ時間を共有した。試験開始とともに「巳の時」は始まり、試験終了とともに「午の時」へと移った。
丙は甲乙のふたりと同じ時間を共有していませんでした。だから、甲乙とは「巳の時」がずれています。その丙が乙と「未の時」に出会う約束をしていた。Cは乙と丙がであった時刻で、乙と丙にとってはこの時点から「巳の時」が始まります。

甲、乙、丙の3人は周囲の環境情報(太陽の位置など)からそれぞれ時刻を「区切る」感覚を体得しています。が、不定時法の時間感覚はそれだけで確立されるわけではない。他の者と「区切り」をすり合わせる感覚も同時に持ち合わせて“時間感覚の確立”になるのです。

不定時法の時間感覚では、世界の住人が同じ「区切り」を共有しません。日の出(明け六)から日の入り(暮れ六)という大きな「区切り」は共有されてはいます。が、その「区切り」も曖昧です。大きな「区切り」の中の小さな「区切り」はさらに曖昧で、住人それぞれがその時々の必要に応じて他の者との合意で「区切り」を定める。だから、「区切り」が多少ずれていても意に介しない。というよりずれていることが前提で、そのずれを調整する感覚をもってはじめて不定時法における“時間感覚の確立”になる。

対して定時法の世界では「区切り」はすべての住人に共有されていると暗黙のうちに想定されています。「区切り」が異なると、それは「区切り」を表示する時計という装置の誤りだと考えられる。たとえば、乙の持っている時計が12:50分を指し、丙の持っているものは13:10を指しているとします。ならば間をとって13:00にしよう――なんてことは定時法の世界の住人は考えません。どちらかの時計が狂っている、あるいは双方とも狂っていると考える。そのように考え、正しい「区切り」を想定することが定時法の世界での“時間感覚の確立”になるのです。

定時法の世界の住人は、この「想定」を“時計を見る”ことを学習する過程ですり込まれています。“時計を見る”の意味するところは“時間を見る”ということですが、時間は目に見えるものではありません。ここでいう「見る」の意味は“目に見えない法則に照らして、現象を解釈する”というくらいのものです。“時計を見る”についていえば「目に見えない法則」とは、“一定間隔で刻まれる時刻”という「想定」です。定時法の世界の住人は、この1つの「想定」を共有している。ということは、定時法の世界はひとつの「想定」に支配された単層的な世界だということができるわけです。

・定時法の世界  ―― 客観的・普遍的・単層的・剛構造
・不定時法の世界 ―― 主観的・限定的・複層的・柔構造

逆に不定時法の世界には、定時法の世界のような単一で支配的な「想定」はありません。ですから主観的・限定的なのです。同時にその住人は互いの主観をすり合わせる感覚も持ち合わせている。ということは、不定時法の世界の秩序の構造は柔軟なものであるということができる。

次はそのような不定時法の世界の住人について、さらに考えてみます。

コメント

>というよりずれていることが前提で、そのずれを調整する感覚をもってはじめて不定時法における“時間感覚の確立”になる。
<

御意。
続きが楽しみです。

続き、書いてみました

が、ありきたりの話に落ち着いてしまいました...

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