愚慫空論

『ハラスメントは連鎖する』(5)

 人間は理性や倫理観があるから正しい行いをするのではない。理性に頼っても、計算量爆発に遭遇するのがオチだ。正しい行いとは情動に沿いつつも、外界と調和した行動のことである。外的規範は、情動の声に従うことを阻害する。つまり、インターフェイスの暴走の原因は外的規範である。


インターフェイス暴走の結果として引き起こされる典型例が、犯罪です。犯罪を置かしてしまった者は、理性が足らない、倫理観が欠如しているとして非難されるのが常ですが、そうではない。犯罪の原因は、一般に考えられているのとは逆に、外的規範に従うべしと命令する理性の方にある。

 情動を抑え込み外的規範に従った姿、それは精神病質に他ならない。精神病質の危険性が指摘されているのに、外的規範に従うことを奨励するのはおかしなことだ。なぜなら外的規範の奨励は精神病質を理想とすることと同じだからだ。
 情動反応ではなく外的規範を絶対視することがハラスメントの本質である。精神病質が理想とされるのは、世界にハラスメントが蔓延した結果だ。問題を引き起こすのは外的規範であるにもかかわらず、それが正当化されているのがハラスメントの恐ろしいところである。
 これはまさに「人格に対する攻撃」と「人格に対する攻撃に気がついてはいけないという命令」の合わせ技という、ハラスメントの基本的と同じ構造になっている。

 ハラスメントを受けると、自分の感覚が信じられなくなっていくので、自分がハラスメントを受けたことを直視することが困難になる。そうなればハラスメントの正当化を信じた方が楽なので、教育やしつけの名の下にハラスメントは美化され奨励されていく。こうしてハラスメントは伝播し、悪循環を重ねていく。



教育やしつけによって子どもに与えられるのは「評価」です。子どもに外的規範を押しつけ、外的規範に従って行動したときに「評価」を与える。愛情とは相手をありのまま受け入れることですが、愛情を与えられず「評価」のみを与えられた続けた子どもは、外部的な価値観に沿って褒めてもらうことが生きる目的となって行ってしまいます。

 親に愛されてないという事実は、子供に劣等感を生じさせる。この劣等感は、子供の側に原因があるものではない。親の側から一方的に押しつけられた「謂われなき劣等感」だ。この劣等感を真に受け、自分の存在を受け入れられなくなると豊かに生きることが不可能になる。
 劣等感を感じた子供は、原因が自分にあると思い込んで、何とかそれを払拭しようとする。その有効な方法が、外部的な価値観に沿って頑張ることである。

そうして成長した子供が

 劣等感を感じると、その原因は評価の低さの方にあると思ってしまう。評価されると、自分は正しいことをしていると思い込んでしまう。結局、評価的視点から自由になるという発想には至らない。そして評価的視点を持っている限り、劣等感の本当の理由には気づくことができない。
 そのような情況で、なんとか劣等感を払拭しようとすると、際限なく評価されることを求め続けることになる。自分自身を受け入れることができず、「苦手なことを克服したい」「完璧な人間になりたい」と努力を続ける。しかし、このような目標設定それ自体が間違っており、満たされることはあり得ない。その結果、行動はエスカレートする。アイヒマンが虐殺に携わるに至ったことは驚くべきことではない。


貨幣経済システムが全域化してしまった現代社会で暮らす者の多くは、システムからのハラスメントにかかってしまっています。「勝ち組」「負け組」といった区分けも、貨幣による「評価」を自身が正当化しまっているために受け入れられている。自由な競争を是認し格差を肯定するのも、格差を否定し所得を再分配すべきと主張するのも、どちらも「貨幣による評価」という枠組みからは出ていない。評価的視点を保持し続けている。よって、劣等感の本当の理由に気づくことはできないのです。

 現代の日本は学歴社会であり拝金主義も幅を利かせている。これらは両方とも強力な評価的視点の表れで、テストでよい点を取れる人間が有能である、お金をたくさん持っていれば何でもできる、という価値観から成っている。このような価値観のなかで育つと、一旦否定した自分の情動反応を取り戻すことは難しい。
 情動反応によって自分の判断ができなくなると、外的規範をルールと見なし、そのなかで一番いい目をした人間が褒められるというゲームの参加者になってしまう。


(6)に続きます。

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