愚慫空論

無実の“死刑囚”124人の衝撃 ~冤罪に揺れるアメリカ~

今晩のNHK『クローズアップ現代』の内容は衝撃的だった。

先進国で死刑制度を持つ数少ない国、日本とアメリカ─── 。
今その一角アメリカで、死刑宣告を受け服役していた受刑者の無実が相次いで判明し、大きな衝撃が走っている。えん罪を見つけ出しているのは、進化を続けるDNA鑑定の技術。残された微量の証拠品から、事件の真相に迫り始めている。一方、えん罪のない司法制度への模索も進められている。自白の強要など捜査の誤りを無くすため、取調室の一部始終を録画する手法が全米各地の警察に広がり始めている。失墜した司法制度への信頼は取り戻せるか。死刑えん罪に揺れるアメリカの今を見つめる。
NHK「クローズアップ現代」のHPより)


まず、日本以上の死刑大国・アメリカに感心したことから。

アメリカが死刑を実施できる背景には、司法制度への絶大な信頼感がある。アメリカはご存知の通り裁判に陪審員性を採用しているが、12人の市民よりなる陪審員全員の賛成・反対で決定される有罪・無罪の評決は「神の声」とまで呼ばれ、これまでは絶大な信頼感を得ていた。ところが科学の進歩でDNA鑑定の技術が進み、残された微量の証拠から次々と冤罪が明らかになった。

まず、この証拠を残しているというところが立派。それがあればこそ、科学の進歩で見えてくる事実もある。そうした証拠を保存すべく法も整備されており、弁護士はいつでもそうした証拠の開示を請求できる。破棄した場合には罰則すらあるという。
124人もの冤罪死刑囚がいたということは驚きだが、それも背景に再鑑定を保証する制度があってのこと。翻って日本の場合、DNA鑑定に掛けようにも証拠品は消費されつくしたと言われてしまうことが多く、法整備も進んでいない。

そして次に感心すべきは、司法制度への信頼が揺らいだとみるや、直ちに次のアクションが起こされたこと。31の州で死刑制度の廃止もしくは執行停止を求める議案が議会に提出されていること(ちなみにアメリカで死刑制度があるのは38の州)、そのうち8つの州では死刑執行を当面停止することを決定している。このあたりは司法制度への信頼が揺らいでいるにもかかわらず、死刑を執行してしまっているわが国とは大違いだ。
このままではひょっとすると、先進国では日本のみが死刑制度を存続させている国となりかねない。

冤罪事件によって明らかになってきたのは、その要因である。裁判において陪審員に伝えられるべき情報が充分に伝わっていなかったという。捜査当局による自白の強要(すぐに被疑者が弁護士を呼べ! というアメリカでもこんなことはある。では、なかなか弁護士を呼べない日本では? と考えると恐ろしい)、不確実な目撃者の証言などで、陪審員の下すべき判断をミス・リードしてきたというのだ。これも日本ではアメリカ以上にありえる話だ。


鳩山邦夫法務大臣にいいたい。死刑執行を躊躇わない旨の発言を聞いたが、警察の自白強要や不祥事が相次ぎ、司法への信頼が失われている現在、少なくとも当面は死刑の執行を停止すべきだ。そして冤罪を完全になくすための手段を徹底的に検討する。まずは警察の取調べの様子を全て録画して、それを法廷へ証拠として提出しなければならないという法案を国会に提出せよ。
裁判員制度も再検討すべきだ。プロの裁判官でもこれまで冤罪を防げずにいるのに、素人の裁判員では法廷に上げられて来たのが証拠が充分であるかどうかなど、なかなか判定できるものではない。死刑の可能性のある重大刑事犯にのみ裁判員制度を導入するなら、尚更それ以前の、犯罪捜査機関への信頼性を高めておかなければならない。
捜査段階でも、裁判による判決の段階においても、冤罪に至る可能性を徹底的に排除した上で、それでも冤罪を撲滅できるかどうが、さらに真剣に議論を重ねるべきだ。その議論の結論は「死刑廃止」に至らざるを得ないと私は確信する。

コメント

驚きました。

トラックバックありがとうございました。また、いつも拍手コメントなどでの励ましありがとうございます。
今回の記事、読んでびっくりしました。冤罪はあるだろうなと思っていましたが、ここまでとは。
それと同時に、証拠の保存、取調べの様子の記録などは日本も素直に学ぶべきでしょう。
また、死刑問題、裁判問題で「司法制度への信頼」がここまで重要な意味を持つことがもっと認識されなければならないと思いました。

貴重な情報をTB有り難うございます。
アメリカの良いところもきちんと学んで欲しいとお玉は思う。かつて亀井静香さんが「えん罪」がつきまとう死刑制度は廃止すべきとおっしゃっていたのを思い出しました。
いつも素敵なコメントを感謝しております。m(_ _)m

予想以上の酷さ

ある程度は予想していたのですが、昨晩のNHK報道の内容は衝撃的。
私の基本姿勢は、護憲左派のブログに死刑問題が出たときには死刑論議に水をかける為の『嫌がらせメール』を送ること。
理由は年間数人程度の死刑は日本の刑罰としては例外に属していて、一般的な例を論じないで例外を論じても意味が無い。其れと国民感情の支持を受け難い事。
しかし近頃は情勢が大きく動いている。
年間数人だった死刑判決が二桁に増え死刑囚は100人を越えてしまった。法務大臣一人で二桁の死刑を執行する異常事態で今までのように死刑が例外的事物ではなくなりつつある。

国家とは、其の領域に住む人(国民)に精神(心)と生命を捧げることを要求する超越的な存在で、戦争も死刑も其の範疇で合法的(正当性)を持っている。

戦争を非合法とする憲法9条のある日本の死刑問題は、戦争を合法(至上の行為)とする合衆国の死刑問題とは自ずと違ってくるはず。
戦争と死刑の関連性を論議すればまったく違った視点が現れる。

TBありがとうございます。
裁判員制度と死刑執行は直ちに廃止すべきだと私も感じています。
感情に流されやすい裁判員制度は、死刑存置派の方には歓迎されるでしょうけれど・・・。

裁判とは客観的なものでなければならないと思うし、法律に明るくない一介の市民が裁判員になって客観性を持てるとは私には思えないからです。

しかし、アメリカのえん罪認定は証拠があってこそのもの。
9・11の証拠が残っていないのは、何らかの思惑あっての隠滅だったのだなぁ、という確信を深くすると共に、日本の証拠品管理の杜撰さに、呆れるやら腹が立つやら、です。
http://aqualeafree.blog70.fc2.com/blog-entry-414.html

件の番組は見てないのですが一言

>それでも冤罪を撲滅できるかどうが

ここ、濁点が一つ余計です。


>このあたりは司法制度への信頼が揺らいでいるにもかかわらず、死刑を執行してしまっているわが国とは大違いだ

司法への信頼の揺らぎといっても、
日本の「警察の自白強要や不祥事」とアメリカの「124人もの冤罪死刑囚」とでは規模が違い過ぎます。規模が違うのだから反応も大違いで当然です。
程度の違いを無視するべきではない。

たとえば秋葉原事件のような容疑者は
北九州一家監禁殺人事件の容疑者は
東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の容疑者は
死刑になるべき人も存在するのではないだろうか

冤罪の危険性は、人が人を捌くかぎり無くなる事はない
だからと言って罪人を逮捕しない訳にはいかない

もし仮にアメリカに死刑がなかったらと考えれば。
確かに冤罪で死刑になった人はいないだろう
だが、かわりに一生を刑務所で過ごす人が出てくる。
無実の罪で人としての権利を奪われて、塀の中で一生を終えたなら、それは人として生きてると言えるのだろうか?

逆に大量に人を殺した人は、一生被害者の苦しみを感じることなく、のうのうと生きるかもしれない

どうすればいいんでしょうね

死刑制度については、国家だけではなく、日本の大衆が関心を持たねばならないと思う。今の日本では、死刑問題そのものが「縁起が悪い」というような風潮になっており、テレビや雑誌でも積極的に取り上げていない傾向にある。大衆が国家に対して死刑廃止を声高に叫ぶようにならなければならないと思う。

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