愚慫空論

「クリーン」を求める

田中良紹氏の『「クリーン」で「国民主権」は守れない』を拝見しました。

大変納得のいく論説だと思いました。けれどただひとつ、どうせならもっとハッキリと断言して欲しかったとは思いました。すなわち、

「国民主権」は「クリーン」ではない

と。これは当たり前の話で、「クリーン」で守れない「国民主権」が「クリーン」であるわけがありません。

コメント欄には氏の意見に賛同する多くの声が寄せられています。が、その賛同者たちも“「クリーン」では「国民主権」は守れない”ということは理解しつつも、実は“「国民主権」は「クリーン」”だと思いこんでしまっているのではないのか? そうした疑念を持たずにはいられません。

というのも、私自身が以前はそのように思い込んでいたからです。深く考えることなく「国民主権」は「クリーン」だとなんとなく思い込んできた。この“なんとなく”を日本人は共有しているのではないか、と私は思うのです。

それだから、日本人は政治家のスキャンダルを追及せずにはいられない。「国民主権」を体現するのは選挙によって選ばれた政治家であり、「国民主権」が「クリーン」でなければならないのなら、当然、政治家もまた「クリーン」でなければならない。だが現実には政治家は「クリーン」ではいられない。というのも日本国民自身が「クリーン」ではないからです。

私は、自身が決して「クリーン」ではないことを日本人はどこかで自覚しているように思います。にもかかわらず、日本人には「クリーン」を求める抜きがたい性質がある。自覚しているからこそ「クリーン」を渇望する、とでも言いましょうか。「クリーン」は日本人の強迫観念のようなものになってしまっている。

この性質は前近代的なものです。政治を“聖なる政(まつりごと)”と捉える心性がまだ日本人には根強く残っているということなのでしょう。日本国が近代国家としてやっていくには、この性質は甚だ具合がよくない。田中氏の論説は、日本国が「国民主権」を奉じる近代国家であることを所与とし、政治に「クリーン」を求める性質を革新していくべきだ、という立場に立ったものです。

が、保守である私はこの前提に疑問です。日本人が所与とすべきは「国民主権」よりも「クリーン」の方ではないのか? これから艱難に直面するであろう日本人の行く末を考えたときに、柄に似合わない「国民主権」の衣装に身体の方を合せていこうとするのは“角を矯めて牛を殺す”、つまり亡国へと繋がっていくのではないかと思うわけです。

日本人がその活力を発揮するのには、「クリーン」を希求する方向性の方が身の丈に合っていると思われるからです。「クリーン」でない「国民主権」は、その実は闘争です。「国民主権」を制度として支えている選挙は、模擬戦争です。が日本人の性質は闘争は嫌う。だから未だに日本では選挙は盛り上がらない。日本人が活力を発揮するのは「和」を実現させる方向性であり、「和」と「クリーン」と深いところで結びついている。日本人は、政の中心に「クリーン」を求めその周囲に「和」を築くこうとする。「和」を築くときに私心があってはならないのです。私心を捨てて事に仕える。すなわち「仕事」です。

日本人が日本人として自身で未来を築いていこうとするなら、「国民主権」と「クリーン」のどちらを優先すべきか、根っこから捉え直してみた方が良いように思います。

コメント

自覚しているからこそ・・・

自覚しているからこそ「クリーン」を渇望する、とでも言いましょうか。「クリーン」は日本人の強迫観念のようなものになってしまっている。・・・』
なるほどなるほど、いやあ、本当になるほどです。

『、「国民主権」と「クリーン」のどちらを優先すべきか・・・』、実社会では全部優先から一部優先(バランスのとり方と言いましょうか)まで事情によっていろいろあると思いますが、例えば自治体レベルで利害対立があったとしても、どうもわれられは調整があんまり上手ではないですよね。

いちばんの肝は、やっぱり根回しだったりして。

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「クリーン」で「国民主権」は守れない(田中良紹の「国会探検」)

「クリーン」で「国民主権」は守れない(田中良紹の「国会探検」) 投稿者 喫煙者にも権利を! 日時 2010 年 6 月 07 日 から転載します。 「クリーン」で「国民主権」は守れない(田中良紹の「国会探検」) より転載──  マキャベリの「君主論」を読みながらシルクロー

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