愚慫空論

結局、勝利したのは保守

昨日は山で仕事をしていた。夜8時ごろから参院選の開票がはじまり、各局で報道番組が流されることは知っていたが、その時間には寝てしまった。それが山での生活のリズムなのである。
今朝、4時半に起きてTVを点けたら、民主圧勝! まあ、ホッとしたというところが正直な感想。

朝食を食べ、弁当を拵えて現場へ出発する準備をしていると、雨が降り出した。雷も鳴る。選挙報道ばかりで天気予報をTV局が天気予報をなかなか放送せず、いらいらしながらTVの前で待っていると(私たちには天気予報のほうがよほど重要。こういった感覚が失われていることが現在社会が抱える根本問題だと思うのだが、それはまた別の機会に)、ようやく申し訳程度に放送したので、それをみて、今日は仕事は中止と判断。んでもって、私はブログを更新すべく、自宅に引き返したのである(爆)。
前段で別の機会にといったことだが、ここでちょっとだけ触れておくと、天気予報の方が重要というのは、これは今回大勝利を得た民主主義のキャッチフレーズとかかわることである。つまり「生活が、第一」。私にとって天候は生活にかかわる。だから大切。選挙結果よりもだ。というのも、選挙結果はあとからでもじっくり見られるから。天気予報はそのときそのときが重要(当たらないけど...)。そのときそのときが重要という感覚こそ、庶民の生活の感覚だと思う。

今回は投票率が60パーセント弱ということで、大騒ぎになった割にはさほど投票率が上がらなかったと嘆いておられる方も多いようだが、私はこんなもので十分だと思っている。別に与党の見方をするわけではないが、投票率が高い方がよいだなんて、本当は思っていない。「生活が、第一」という感覚からすれば、選挙などより仕事や遊びの方が大切だ。
確かに、そんなことでは一部勢力の思うとおりにされてしまい、大切な生活が脅かされてしまう。今回の選挙は、そうした危険を回避するための機会であった。だから、私も一応、期日前投票をした。とにかく、安倍自民党は危険だと思ったから。また、そういう考えは民主主義の基本理念にもとるという方もいらっしゃるだろうか。別に棄権する自由を主張するわけではないけど、みなが投票せねばならない、といったような強迫観念めいたものは、どうも胡散臭い。投票率が高くなることが民主主義の成熟につながる、というのはちょっと短絡的ではあるまいか。あまり高くない投票率でも自民大敗の結果となったこの選挙は、そうしたことを示してはいないか?


もうひとつ、今回の選挙結果で感じるのは、タイトルにも書いたとおり、結局保守の勝利ではないか、ということだ。
自民党は元来保守だけれども、小泉以降、革新政党に鞍替えしてしまった。いや、復古政党というべきカナ(安倍首相になってから、復古の色合いが濃くなった)? もっとも、本来保守という認識は誤りで、自民党はタカ派からハト派まで各派閥で政策の色合いが違い、そうした派閥が政権という旨味のある求心力によって結ばれていた政治集団というべきなんだろうが、そうした実利的なところが庶民には頼もしく映っていたのだろうと思う。「生活が、第一」という感覚に合い通じるものがあるし。
ところが、小泉がそうした自民党をぶっ壊してしまったがため、自民党は改革を訴える革新政党に鞍替えしてしまった。安倍首相は最後まで改革を断行すると訴えた。ゾンビになっても訴えているみたいだけど(苦笑)。
年金問題が大きな焦点になってしまって安倍首相にとっては肝心要の憲法改正問題は何処かへすっ飛んでしまったが、これも庶民がそもそも持つ「生活が、第一」という感覚に反するものだったからであろう。それはそうだ、年金がいい加減に扱われているということは、それは庶民の生活がいい加減に扱われているというのと同義だから。民主党が本当に「生活が、第一」という理念を大切にした政党かどうかは別として、というよりそもそも政治が本当に生活を豊かにできるのかという問題もあるのだが、これは次回やるとして、民主党のメッセージが今回はぴったり庶民感覚にフィットしたということだろう。

そうした意味で、共産、社民の革新政党には従来からの固定客しか寄ってこなかったというのも、至極当然であろう。政策内容は9条堅持を除いては庶民によりそう保守的なものなんだけど、9条を言うからどうしても革新の色が抜けない。庶民感覚からすれば、9条は革新というイメージになってしまっている。
これは面白いことだと思う。9条は今、改定しても堅持しても革新のイメージになってしまう。その原因は厳密に言えば憲法違反の自衛隊の存在が大きいのだろうが、9条の規定そのものがそもそも革新的というところもあると思う。


こんな風に書くと、いつも庶民は保守、実もフタもない言い方をすれば、テメエの利益のことしか考えていないのか、ということになってしまうが、実際のところそうであろう。テメエの利害に絡む(と思われる)年金には敏感に反応しても、自殺者が年3万人を越えていると言われたって、たいていの人は、ふ~ん、で終わってしまう。人は死ぬことを考えるのは嫌なものだから、自分にそんな事態が降りかかってくるなんて、その場になるまで想像もしない。
とはいうものの、“自分で死ぬ”ことは考えなくても、“他人に殺されるかもしれない”ことには重大な関心を抱く。今日は土用の丑の日で、国産ウナギが良く売れていると報じられているが、これなど、自分の命が大切ということの現われだ。そして、そうした人々に対しては、生命財産が脅かされている、守らなければ、という主張は効く。武力を放棄することが巡り巡って世界全体の安全性が高くなるなんて話は、届かない。なぜなら、そのときそのときが大切だから。

しかし、実は、己の利害以外にも庶民を突き動かすものがもうひとつだけある。それは「夢」である。同じ革新政党の自民党が前回の衆院選で大勝して、今回大敗した大きな差は「夢」があったかどうか、であるのではないだろうか。
もちろん、前回小泉が描いて見せた「夢」はペテンであった。でも、多くの人が見事に騙された。ん? 過半数は騙されていなかったのかな? けれど、結果は騙されたことになってしまった。
翻ってみるに、社民、共産には夢がない(こちらは「」なし。正真正銘の夢を描いて欲しいと願うから)。正論はあっても夢がない。革新は本来、夢を描かなければならないのに、それができていない。そんな革新政党には存在意義すらないと私は思うし、実際、有権者の審判であろう。


現在では敗北した理論、間違った理論というレッテルが貼られてしまったマルクスだが、マルクスの理論がかつて提供したのは「夢」であったはずだ。マルクスは、格差社会を批判するだけでなく、その実態を分析し問題の核心を抉り出して、そこから抜け出すための具体的な道筋を描いた。その道筋が正解であったかどうか、それはわからない。けれど、正解かどうかなんていうのは、この際、重要ではない。そんなもの、やってみなければわからない。ただただ、夢が描けるかどうか。それが出来ない革新政党は、ジリ貧になっていく以外にはないだろう。

コメント

そうですね

なるほど。
成田、石橋時代には夢があったのですよね。「いい世の中を作ろう」という。
あの頃、井上陽水は「傘がない」のが問題だと歌っていましたが、今は「屋根がない」のが問題なんで・・・。
政党に夢を任せるのではなくて、一人ひとりが行動せねばね。
そういった意味で今回の結果には、「うん、日本国民も捨てたもんじゃない」という思いを持ちました。

異論ではないのですが

>マルクスは、格差社会を批判するだけでなく、その実態を分析し問題の核心を抉り出して、そこから抜け出すための具体的な道筋を描いた。

そのとおりだと思います。そこにかつてマルクス主義が「科学的社会主義」と自負しえた根拠があったのだと思います。
資本主義に対する批判をいくら精緻化し呼号したところで、それを乗り越える道筋と未来像を描けない限り、批判はたんなる画餅に過ぎません。
その点では、正直に言って、現在の「革新政党」にも左派の知識人にもなにも期待できないと思っています。
それは、残念ながら、政党などに解決できるレベルの問題ではないと思います。
私が内田樹という人に注目しているのは、彼は、この問題の困難さを明瞭に自覚している数少ない人のように思えるからなのです。そういう読み方をする人は少ないのかもしれませんが。

主義や夢より目先の金

愚樵さん『庶民を突き動かす夢』なんて其れこそ夢でしかありませんよ。
夢や理想や主義で動くのはインテリ知識層か生活にゆとりがある中産階級の人だけですよ。
生活保護ライン以下の収入しかない庶民にとって夢では食えません。
まず食うこと。「衣食足りて礼節を知る」衣食住に問題があればまず考えるのは金。金です金。夢よりも金。金の無いのは首の無いのと一緒です。

生活に心配の無い内田樹などの学者先生は此処のところの理解が足りない。
能天気な似非理論を振り回し『格差は気持ちの持ちよう』などと頓珍漢なことが平気で言える。
選挙で票が大きく動くのは目先の金。金で動く。

山が動いたマドンナ選挙の時もそうでしたが年金問題や住民税増税のように財布に直結する問題は票に直結するが、憲法や外交は利権に結びつかないので基本的に票にならない。
天木氏のように外交問題に見識があっても単なる泡沫候補にしかなりませんね。
憲法改正を声高に標榜していた安倍晋三も選挙でいくら宣伝しても票に結びつかないことに気が付いたのか殆ど何も言いませんでした。
改憲、護憲に関係なく憲法問題で票を集める事は可也困難です。
勝ったのは生活重視(目先の金)を訴えた民主党。
今回の選挙は護憲派の敗北ではなく、憲法問題で選挙を戦った全ての政党(自民党共産党社民党)の敗北ではないでしょうか。?この三党揃って議席を6割に減らしている。

本論、各コメント拝読して

国政と会社を対比させるのは、甚だ強引なのですが、
いま、現実の企業の多くは崇高な経営理念を掲げつつも、
末端の従業員は雇用条件・待遇格差(平たく言えば正規、
非正規雇用)など諸般の問題を抱えつつ、皆が丸くなって
働いている状態ではないでしょうか。
だだ、この現場の現実は経営理念の存在を否定してしまう
理由にはなり得ませんし(現実が追いつかないからといって
理念を否定しては、やがてはその企業組織は立ち行かなく
なる。逆に、足腰の全く伴っていない理念は、まず意味を成
さない)、ここは、確実に体力を回復させることを目指したい
ものです。
あと、余談になるかもしれませんが、布引洋様が挙げて
いらっしゃる、山が動いたマドンナ選挙の時。
私はあの頃まだ学生で、詳しい状況は判らないのですが
確かに物凄い強風だったように記憶しています。
当時、何か尋常ならぬ熱気を感じました。

庶民の記憶力は75日

みもふたも無い主張『夢や主義より目先の金』の続編

安倍閣僚のスキャンダルや問題発言の数々。一番効いたのは赤恥農林水産大臣。
多くの普通の人の記憶力は短期記憶しか保てない。
色々次々と事件が起こっても普通人の脳は最初の記憶と最後の記憶を記録するだけで間にある記憶は省略する。
新しい問題が浮上すれば、古い記憶は脳内で自動的に消去される。
赤城氏はひど過ぎた、選挙の引き伸ばしは一週間や二週間では駄目で最低でも3ヶ月は必要だった。
経費の記載もひどいが、無精ひげに顔面絆創膏、皺くちゃのスーツ姿で閣議に出席、
皮膚病との説明ですが、其れでは無精ひげと顔面絆創膏は説明できても皺くちゃスーツの説明は無理。
ホームレスになって公園のベンチで寝起きしているホワイトカラーのようにも、誰かに無理やり監禁されていたようにも見えた。
説明すればするほど疑問が湧いて来る不思議な内閣。

選挙に強い小泉純一郎の記憶も偽モノ。
最初の小泉フィーバー選挙と最後の郵政選挙だけ勝っているが、真ん中の負けた2回は人々の記憶から抜け落ちている。
小泉の戦った4回の国政選挙の内、勝ったのは二回だけ。
小泉フィーバーで6年前には大勝したが3年前の参議院選挙で小泉が勝てなかったから今回の与野党逆転が実現した。

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