愚慫空論

労働主義社会の実現は、案外簡単かも?

「労働主義」というのは、愚樵の造語です。それはすなわち、労働者が労働を商品として売らない自由が保障された社会であり、さらに進んで労働が資本よりも上位にある社会であり、現在の資本主義と対立する概念です。労働主義社会は労働価値説に立脚する社会ですが、共産主義、社会主義ではありません。あくまで自由主義経済です。

現在は起業家ブームだと言われていますが、労働主義社会は、労働者ひとり一人が起業家であるような社会でもあります。

資本主義社会を終焉させ、労働主義社会に移行するための方法は、2つ。

1.株式会社における株主の有限責任を排して、無限責任とすること。
2.労働者が合名会社や合資会社を容易に設立できるように、優遇政策を実施すること。

まず1.についてですが、そもそも株主は自らが投資した金額を上限にそれ以上の責任を負わないという有限責任という制度がおかしいのです。株式会社は、株主の所有物であるとされています。そうであるなら、株主の所有物が他者に与えた損害は、株主が全責任を負ってしかるべき。ごく単純な論理です。

株主有限責任の制度は、株主に極めて有利な制度です。このような制度は、産業革命時、生産の三要素である土地・労働力・資本のうち、資本が不足していて過小財であった時代には有効な制度であったかもしれません。しかし、現代はカネ余り、資本過多の時代。そんな時代に資本過小の時代の残滓を残しておく必要など全くないのです。

次に2.ついて。

『合名会社』(Wikipedia)
合名会社は機能資本家(出資をし、かつ経営にも参加する資本家)が結合する企業形態である。基本的な組織構造は民法上の組合とほぼ同じで、組合に関する規定が準用される。ただし、法人格を与えられることにより、団体そのものが権利能力を有し、取引の主体となることができる点が異なる。

ここには「機能資本家」という用語があり、出資をし、かつ経営にも参加すると資本家の視点から記述されていますが、労働者でありながら出資をしかつ経営にも参加するものであっても一向に構わないはずです。しかも規定では、資本金は1円で構いませんから、労働者は事実上出資しなくてもよい。資金はすべて借入金でスタートしても良いわけです。

労働者自身に高い付加価値のある労働を生み出す能力があると認知されていれば資金は集めることが出来るはずですし、また政策によってそうした労働者が容易に資金集めをできるように支援することも可能なはず。また株主の有限責任制度が廃止されれば、会社組織よりも労働者個人に投資を行うインセンティブも高まると考えられますから、高い技能をもつ労働者はよりいっそう資金を集めやすくなると考えられます。

労働主義社会では、資本主義社会のように経済活動において個人が有限責任しか負わないで済む制度は全面的に廃止されます。ですので、資本主義社会よりも徹底した自由主義でもある。ただしその分、社会保障はしっかり充実させる必要があります。

ベーシック・インカムの制度を整えることは無限責任を負って破産する者を救うと同時に、労働者が自ら責任を負って起業することを後押しすることになるでしょうから、ベーシック・インカムも2.の具体的な方法のひとつになると考えることが出来ます。またベーシック・インカムは、労働者に市場価値が高いとはいえない労働へ従事する自由も保障することにもなります。

ただし、この2つの手段で現在の社会経済が抱える問題をすべて解決するのは不可能でしょう。労働主義社会に移行することが出来たとしても、利子を取ることが基準になっている現在の貨幣制度を改めなければ解決できない問題は多々ありますし、なにより労働者が利子を取られる限りは、資本家よりも労働者の方が上位に立つことができません。

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労働主義社会の実験は既に実行されています。

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