愚慫空論

農業ビジネスは危険

今日も朝からのブログ更新です。

朝からブログの更新ができるということは、自宅にいるということ、すなわち仕事に出かけていないということ。今日で10日になりますが、今年はまだ仕事にありつけていません(泣)。といって、それは勝手に長すぎる正月休みを取ったのと、お天気が原因なので、派遣切りに遭った方々のように差し迫っているわけではありませんが。

というわけで、朝のNHKニュースなどをのんびり眺めておりましたら、出てきたのが農業ビジネスの話。あっ、と思って慌ててブログを書き始めました。報道の仕方はいかにもよいニュースのような伝え方なのですが、実はとんでもないこと。よく見ていると、NHKはこういった所業をよくやります。特に日曜の朝に多いような気がする。まあ、これは気がするだけで、意識的にチェックしたことはないからはっきりとは言えません。


で、報道の内容ですが、NHKのホームページに出ていれば引用すれば楽なので、探してみました。が、見当たらないようです。だいたいこの手の報道は、ホームページには出てこないというのもひとつの特徴のようです。

仕方がないので記憶の中から引き出しますと――

昨今は庶民の食品の安全性への不審が高まっている。それで、国産の食材に人気が集まるようになっている。銀行等は、これまで農業分野への投資には消極的だったが、投資先が見当たらない現在の不況と、消費者の国産農産物回帰の流れから、確実性の高い投資先として農業が見直されている。農業へ投資が活発になって農業生産力が高まれば、低迷している食糧自給率の向上にもつながる。今、静かに農業ビジネスの道が広がりつつある――

といったような内容です。

一見すると、非常に良いことのように見えます。しかも、それをNHKが好意的なニュアンスで報道する。そうすると、世の中には農業ビジネス承認の雰囲気が広まっていく。だが、実はこれは恐ろしいことなのです。

上記のような主張は、これは「グリーン・ネオリベラリズム」と言われる者たちの主張するところなのです。「グリーン・ネオリベラリズム」とは何か? ネオリベラリズムとは新自由主義ですから、農業分野に市場原理を持ち込もうとしている人たちのことです。参考にコチラ↓をご覧ください。

田原総一郎と猪瀬直樹の「グリーン・ネオリベラリスム」(代替案)

実は、グリーン・ネオリベラリズムは、もうすでに世界を席巻しています。特に発展途上国。アフリカや中南米などは、もはやグリーン・ネオリベラリズムの支配下にあると言ってもよいかもしれません。こうした現状については、しばしばNHKでも報道されています。

そう、同じNHKです。ですがそれらの報道は、人目につくような時間帯で行われることはまずありません。それに、NHKが製作した番組でもない。私が目にするのは「BS世界のドキュメンタリー」。主に欧米の報道局が製作した番組を紹介するものです。NHKでも、いろいろなところがあるのですね。

「BS世界のドキュメンタリー」では、ホームページで過去の放送内容の概略が紹介されています。

そのなかからいくつか拾ってみますと

『<食とグローバリズム> アマゾン 大豆が先住民を追いつめる』

『<食とグローバリズム> EU農業が発展途上国を圧迫する』

『綿花地帯からの告発』


『エチオピア コーヒー生産国の悲劇』

これらの番組では、「グリーン・ネオリベラリズム」の支配下におかれた発展途上国の住民の様子を描いています。



日本の農業は、江戸時代の幕藩体制下によるものから明治維新を経て近代化され、地主と小作人に別れる収奪農業へ移行しました。戦後、GHQによる農地改革によって農民は自作農の立場を取り戻し、また農地は法によって自由な売買を制限さるようになり、自由化とはほど遠い状態にあります。主要穀物である米・麦については農水省が管轄する悪名高き食糧管理制度があり、農業の生産効率を低下させているばかりでなく、非効率な行政で税金を浪費している。あまつさえ、汚染米を撒き散らして、食の安全を脅かしている――農業を自由化して農業ビジネスを活発化すれば、これらの欠点はきれいに精算され、安全で安価な食が国民に提供されるようになる――が、果たしてそうでしょうか?

農業がビジネス化するということは、それは農業が資本主義の原理――金融の原理――に支配されてしまうということです。現下の不況の原因はどこにあるのでしょう? 金融危機がその発端になっていることは、誰も知っていることです。派遣切りも、金融崩壊でモノが売れなくなって工場が減産に追い込まれたことによって生まれました。

しかし農業の場合、クルマやテレビと違って需要がなくなることはあり得ないのではないか? それはそうです。ですが、自由化の問題は供給への不安です。自由化されビジネス化されてしまうと、需要があっても供給できなくなる恐れが出てくる。今、バターやチーズが手に入らないのはなぜか? また、米カリフォルニアで起こった電力危機も、自由化によって供給が需要に応えられなくなった良い例です。それが米で起こったらどういうことになるでしょうか? 

農業は自然環境に依存する要素が大きいですから、生産量をコントロールすることが難しい。それに農産品はすぐ劣化しますから、在庫がきかない。なので、一時期に大量の生産物が市場に供給されて価格が暴落し、“豊作貧乏”といったようなことになりますし、それを防ぐために収穫物の大量廃棄が行われたりする。農業が自由化されれば、廃棄は今以上に多くなるでしょう。金融の観点から見た効率的な農業経営は、資源の有効利用という観点からの効率的な農業経営を可能性が高い。農業に求められている役割を考えたとき、金融の観点からみることが大切なのか、資源の有効利用が大切なのか、考えるまでもありません。

今の日本の農業経営のあり方に問題があることは間違いないでしょう。特に、食糧管理制度をはじめ、行政のあり方は問題が多すぎる。しかし、だからといって、農業を行政の管理下から切り離して金融の支配に委ねるのは、危険あまりにもすぎます。

冷静な議論を喚起するならまだしも、好意的な雰囲気作りを誘導するような報道を流すNHKは、自らの犯罪的行為を自覚しているのでしょうか?

コメント

ちょっと反論

資本主義の原理は、決して金融の原理ではありませんよ。おそらく株式市場における「企業価値」と「株価」に関する部分で金融が絡むことから、そういう話になってくるのでしょう。
ただし、「投機」を最小限に食い止める仕組みさえできれば、企業価値も株価も、実は理論的に計算ができるわけで、取引における駆け引きが発生しても、理論値とそう乖離するわけではありません。

そして、いくら「市場原理にゆだねる」といっても、マクロ経済は、結局政府の介入がなければ、景気と不景気の波が極限に広がり、最悪の場合「出口の見えない不景気」にも陥る危険性がありますから、業種のいかんを問わず、何らかの形で政府の介入はあります。
規制の強化や緩和、許認可事業といった直接的なものから、税制による「事業展開の誘導」のような間接的なものまで、介入の方法や度合はさまざまですが、あるにはあります。
問題があるとすれば、その「介入の度合や方法が適切ではない」という点にある、ということですね。

公害問題や地球温暖化に端を発した規制もあれば、オイルショックの反省から、資源の有効活用のための規制もあります。
農作物の場合、いくら自由化を原則としても、天候によるリスクがある点を考慮した政府の規制や介入があることは必須となります。農業の自由化で問題となるのは「一切介入したり規制しない」という、『政府の怠慢』にあるものと思われます。

かつて「夜警国家論」が横行した時代に、人類は「世界恐慌」を経験しました。それが第二次大戦の引き金となったわけですが、農業に限らず、これを無視した自由化などは、「金融の原理」「新自由主義」という上品な単語ではなく、ただの「アホ」でしかありません。
つまり、「批判」「非難」ではなく「軽蔑」「侮蔑」という類の発言が適切な状態になる、ということですね。

ちなみに、不採算だがユニバーサルサービスが求められる分野は「政府の仕事」となります。もちろん、そのコストは市場が「税」という形で負担することになります。
この分野まで「自由化だ!自己責任だ!」というのであれば、「じゃ、電気もガスも水道も、全部自分でやってちょうだいね」ということになりますが、こんなことになったら、天文学的な経費自己負担となり、どんな大資産家や大企業でも、破産するところがボコボコ出てくるだけですね。

同意

お邪魔します。仰るとおりです。
グリーン・ネオリベラリズムは「緑の革命」とは違うものなのでしょうか?番組名から察すると結果は同じようなのですが。
農業を企業がやればどうなるかは日本の歴史がすでに示しているのではないでしょうか。米の買占めや売り惜しみに対しては一揆や米騒動が最終的に起こった。当時の施政はそれに対処できなかったが、今の政府は対処しようともしないことは明白。
農業の大企業化は危険で、それを虚偽を持ってすすめるNHKも危険ですね。

農業を自由化すべきです。

僕は自由化すべきだと考えています。
農作物に係る関税も撤廃すべきだし、(研究は別として)農家への補助金もやめるべきだし、参入規制も撤廃すべきだと考えています。
農作物を作るのは日本だけではありません。世界中で作られています。
競争によって効率的にいきましょう。
今のままだと一部のブランド的な作物以外は日本は農業に適してないと思いますが、いろんな企業の参入によってイノベーションが起こるかもしれませんし。
いいことづくしじゃないですか?

わくわくさん

>資本主義の原理は、決して金融の原理ではありませんよ。

もちろん、その通りです。しかし、金融の原理が資本主義の原理を飲み込み変容させて、破綻させているのが現在の状況というのも間違いないでしょう。私は、そうした状況のなかで、イメージだけの銀行性善説を振りまいて、農業ビジネスを正当化するような報道に疑問を呈しているのです。

*****

飯大蔵さん、ようこそ。はじめてでしたっけ? 私のほうでもそちらをしばしば拝見させてもらっておりまして、記憶が曖昧です。

>グリーン・ネオリベラリズムは「緑の革命」とは違うものなのでしょうか?

そのあたり、私もよくわかりません。そもそも「緑の革命」という言葉の定義がかなり曖昧ですよね。「持続可能な社会」との関連はすぐに連想できますが、その「持続可能な社会」の姿もまだまだ曖昧ですし。なので、現時点では、グリーン・ネオリベラリズムも「緑の革命」の一形態と言えるのかもしれません。私としては、グリーン・ネオリベラリズムは「緑の反動」と呼びたいですが。

*****

ノーネイムさん...とは、また困りましたね。通りすがりさんですか?

>いいことづくしじゃないですか?

誰にとって? 

じゃあ太郎ということで。

食べ物を食べない人間ということですべての人にとってって感じですかね。

農作物には天候のリスクがあります、買い占められたら我慢するわけにはいかずに困るというのもあります。
だからこそ、供給先を多く準備しておくことが重要なのです。そのためには規制をなくすことです。関税をなくし、日本の市場に参入できれば、海外で日本好みの供給がはじまるかもしれません。

それによって、さらに安価に食料を買えるようになるかもしれません。(これは競争により、決まるのでそれぞれの需要のままに消費できるってことです。)
この競争になれば、日本の農業は一部のブランド作物以外は淘汰されるかもしれません。もちろん競争で日本人は国産を望んで、淘汰されないかもしれません。しかし、値段が多く付く国産は淘汰されそうです。

大事なのは自由化されたときに、世界で食料を確保できる購買力が必要ってことです。日本は今のところは十分ですが、将来も維持していくためには、非効率な農業よりも効率的な産業へ転換すべきなのです。

愚樵さん

>しかし、金融の原理が資本主義の原理を飲み込み変容させて、破綻させているのが現在の状況というのも間違いないでしょう。私は、そうした状況のなかで、イメージだけの銀行性善説を振りまいて、農業ビジネスを正当化するような報道に疑問を呈しているのです。

竹中平蔵の唯一「功績」ですけど、銀行は回収の見込みがない事業へ投融資をしなくなりましたから、それが投融資をするというのは、「事業として見込みあり」という程度の話だと思いますよ。

また、NHKですら、「銀行とは、晴れの日に傘を貸して、雨の日に傘を取り上げる」と言っていたのですから、『銀行性善説』で番組をつくるんだろうか・・・という思いもあります。(笑)


飯大蔵さん

>農業を企業がやればどうなるかは日本の歴史がすでに示しているのではないでしょうか。米の買占めや売り惜しみに対しては一揆や米騒動が最終的に起こった。

もし、私が農業大企業の企業経営者であれば、競合他社での売り惜しみや買占めについて、「わが社の大特価セールにご協力いただきまして、誠にありがとうございます。」と感謝感激の広告を出しますよ。
自由競争社会では、「値下げ」もさることながら「値上げ」も覚悟がいるんです。

EUの「食管制度」

愚樵さん、
さつきと申します。
あちこちのブログですれ違っていますが、御挨拶が遅れました。

愚樵さんの主張に賛同いたします。
二十一世紀は人口問題、食料問題、貧困と飢餓の問題の世紀だと思います。
ネオリベラリズムが世界の貧困と飢餓に拍車をかけているのは明らかです。
金融支配を規制しても、市場原理主義であるかぎりにおいて、貧困と飢餓の問題は解決できないでしょう。
なにより、食料の国内自給率がこの有り様では、今後予想される世界の人口爆発と環境変動に対処できません。
「BS世界のドキュメンタリー」関連のリンク先で、
『<食とグローバリズム> EU農業が発展途上国を圧迫する』
は、逆にEUの「食管制度」と保護主義が途上国の貧困を生み出しているという主旨ですね。
今の日本の食管制度とEUのそれとの、中間くらいが良いのではないでしょうか?

Re: EUの「食管制度」

> あちこちのブログですれ違っていますが、御挨拶が遅れました。

さつきさん、ようこそ。特に科学関連の話題のところで、ですね。またそちらの方面でもよろしく、です。

> 二十一世紀は人口問題、食料問題、貧困と飢餓の問題の世紀だと思います。
> ネオリベラリズムが世界の貧困と飢餓に拍車をかけているのは明らかです。

ネオリベラリズムにも真正と偽とあると思っていますが、「グリーン・ネオリベラリズム」は偽のほうですね。彼らの目的は利潤追求ですから、農業がそれら支配されてしまうと必要なときに必要な食料が分配されなくなる恐れがありますね。上手く回れば、食料の必要性と利潤の追求とがマッチングするのでしょうが、常に上手くいくとは限らないのは、現下の金融危機をみても明か。そんな状況で利潤の方を優先されたのでは、人類社会そのものが崩壊しかねない。非常に危険だと思います。

> なにより、食料の国内自給率がこの有り様では、今後予想される世界の人口爆発と環境変動に対処できません。

御意。

> 「BS世界のドキュメンタリー」関連のリンク先で 『<食とグローバリズム> EU農業が発展途上国を圧迫する』 は、逆にEUの「食管制度」と保護主義が途上国の貧困を生み出しているという主旨ですね。

はい。

> 今の日本の食管制度とEUのそれとの、中間くらいが良いのではないでしょうか?

そうですね。理想型は「地産地消」だとは思いますが、移行形態として、仰る「中間」は必要だと思います。

ありがとうございます

こんにちは

いま、生産者米価が1万2千円だとかいわれ、時給換算200円を切るとかいわれるものを、
「企業化」して、成り立つはずがない。

海外の「児童労働」など低コスト生産農産物と張り合うのを「国際競争力」と言ってるのがマスコミです。

「自由化」によって広い農地を安く手に入れた後、「規制緩和」によって、儲ける手段にする、というシナリオが見えてます。

第二迷信さん

こんにちは。

>「自由化」によって広い農地を安く手に入れた後、「規制緩和」によって、儲ける手段にする、というシナリオが見えてます。

ですよね。だものだから、次にバブルが生じるとすると農業などの一次産業、あるいは環境の分野だと言われているのでしょう。

>>「自由化」によって広い農地を安く手に入れた後、「規制緩和」によって、儲ける手段にする、というシナリオが見えてます。

沢山美味しいもの作ってもらい、沢山儲けてもらい、沢山税金払ってもらい、沢山のモノを買ってもらい、沢山の雇用を生んでもらう。
その何が悪いのでしょうか?

あなたたちが、一人一台パソコン使えるのも、紐を引っ張れば灯りがつくのも、ダイエットを気にしなければいけないほど食べられるのも、冬は暖かく、夏は涼しくいられるのも、全て資本主義の下で行われているビジネスのおかげですよ?

散々お世話になってる資本主義ビジネスを悪し様にけなすのはどーなのかと思います。

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