愚慫空論

【カネ】は3番目

10月14日、朝。ネットでニュースを見る。

13日の欧州各国の株式相場は、前週末の終値から大幅に値を上げて取引が始まり、上昇基調で取引を終えた。上げ幅は英国が8.26%、ドイツは11.40%、フランスも11.17%と大幅になった。英国政府が大手3金融機関に6兆4千億円の公的資本注入を行って国有化することを発表、ドイツやフランスも公的資金注入の方針を打ち出し、金融市場の混乱が一定程度収まるとの見方が広がった。

10日に主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が金融危機対策として銀行への公的資金の資本注入を実施する方針で合意。ユーロ圏15カ国も12日、公的資金注入などを盛り込んだ「共同行動計画」で合意した。一連の金融危機対策を市場がひとまず好感した格好だ。
asahi.com 10月14日1時46分

この流れを受けて、NY株価も持ち直したらしい。900ドル以上の値上がりだとか。となると、今日の東京も持ち直すだろうか。これで金融危機も収束に向かう...と思いたいところだが、そう簡単に行くかどうか。なにせ理屈ではないのだから。〈投資家の心理〉に左右されるのだから。投資家たちもこれでまだまだ完全に安心したわけではなかろう。何かまた“事件”が起こればまたたちまちに転落を始める可能性は捨てきれない。今、世界最大の企業、GMの倒産が囁かれているが、それが現実になったら?

先月には、韓国が危ないという話もあった。なんでも外貨が決定的に不足しているという話で、企業倒産ならぬ、国家倒産の危機に瀕しているというような話。その話に、アメリカ政府系住宅金融機関ファニーメイとフレディマックが絡んでいるという話。素人にはわけがわからないが、とにかく現時点で韓国は倒産していない。だが、問題が根っこが解決したわけでもなさそう。

また、そうでなくとも。いまや530兆ドル(6京円=6000000000000円)といわれている金融デリバティブの残高。これがまったく無傷であるはずない。というより、こういうところが一番危ないはずなのだけれど、普通にメディアで報道を追いかけているだけではまったくわからない。どうなっているのだろうか? わけがわからない。

とにもかくにも、カネの話。経済の話といえば、カネの話。それで誰も不思議に思わない。でも、ちょっと待てよ? 経済ってのは、イコール【カネ】のことだったのだろうか?


******

Yahoo!の辞書から「けいざい」の意味を調べてみた(出典は三省堂・大辞林)。

けいざい(経済) 名詞
〔補説〕 「経世済民」から
[1]    〔補説〕 economy
物資の生産・流通・交換・分配とその消費・蓄積の全過程、およびその中で営まれる社会的諸関係の総体。
[2]    世を治め、民の生活を安定させること。
    ・    男児の事業を為して天下を―するは〔出典: 花柳春話(純一郎)〕
[3]    金銭の出入りに関すること。やりくり。
    ・    我が家の―は火の車だ
[4]    費用や手間が少なくてすむこと。節約。
    ・    電話ですむなら時間が―だ

トップに挙がっているのは、物資すなわち【モノ】のこと。【モノ】を通じて営まれる社会関係のこと。次に、政治といわれる営為も含めての意味。【カネ】が出てくるのは3番目。

【カネ】が3番目? トップに挙げられてしかるべきじゃないのか? 金融関係者ではない庶民にとっても、経済といえば何を差し置いてもまず【カネ】なのだから。【カネ】がなければ何も始まらない。愛だの魂だの人間の内面の話はともかく、“現実”の生活では【カネ】がすべて。

だが、少し立ち止まって考えてみれば、3番目という順位は妥当なものだと理解できる。【カネ】は食えない。ヤギやヒツジじゃあるまいし。【カネ】では雨露もしのげない。だれも紙で家を建てたりしないし、硬貨をくみ上げて家を建てることも、まず無理。金融機関のコンピュータにクレジットされている数値と来た日には、もはや霞である。

人間が生存し、生活を営んでいくための必要なのは【モノ】。【モノ】が必要なだけあれば、次は治安・秩序。【カネ】はそれからの話だ。だから、3番目という順位はきわめて妥当なのである。にもかかわらず、私たちの“現実”の生活で相手にしなければならないのは、圧倒的に【カネ】。【カネ】が敵(かたき)の世の中だ。あまつさえ、現在騒がれている金融危機は、実体経済――私たちの“現実”の暮らし――を破壊しかねないといわれている。過去にはそういう歴史が実際に存在している。その歴史が教えるところでは、【カネ】は庶民の暮らしを破壊し、戦乱を導いた。

今回の金融危機が、かつての歴史上の出来事と同じ道を歩むかどうかはわからない。そうならないことを切に願う。関係者の誠意と努力に期待する。無力な、すなわち【カネ】を持たない庶民としては、金融危機という現実の前では、期待し祈ることだけしかできない。

だが、その一方で、なぜこのような事態に立ち至ったのか、そのことは自分の頭でしっかり考えてみなければならないと思う。いわゆる専門家のいうことを鵜呑みにしてはならないし、専門家の真似をして金融経済のテクニカルな事柄を学習する必要もない。そんなことをすればかえって視野狭窄に陥る。なぜ、【カネ】が3番目なのかがわからなくなる。

【カネ】は3番目であるにも関わらず、1番目に挙げられるべきと感じられる生活実感。ここにはなにか理由があるはずなのだ。探り当てるべきは、この理由である。そこさえ探り当てれば、何をすべきかが見えてくる。“期待し祈ることだけしかできない”という場所から離れることができる。もちろん、その理由を探り当てることができたとて、今回の金融危機がもたらすかもしれない破壊から逃れることは難しい。否応なく巻き込まれていってしまう。だが、その理由がわかれば危機は好機になるかもしれないのだ。

危機を好機に変えることができなければ、待ち受けているのは現在以上に“生きにくい”社会だろう。一部の者が全てを握るようになる。それを覆すには暴力的な革命が必要になる。多くの生命が失われる。

それとも、まだ私たちは、血を流し足りないのだろうか?

******

参考に『藤原直哉のインターネット放送局』の

藤原直哉の「日本と世界にひとこと」 2008年10月7日 政府も止められない暴落

mp3ファイルで配信されている「放送」を聴いてみてください。

コメント

愚樵さん、こんにちは。

【カネ】。
マトモに考えると、なにがなんだか分からなくなりますね。
ただの紙っきれ、あるいはPC内のデータに過ぎないものが、物凄い威力を発揮する。
以前、ホリエモンが「カネで買えないものは、ほとんどない」と発言して問題視されましたが、私は「彼(堀江)は常識論を言っている」と思いました。
人間の悩み事のかなりの部分は「カネで解決できる」問題なのですね。
だからといって、【カネ】こそ至上なのだという立場を私はとりませんが・・・。

以上、何がなんだか分からなくなってしまいました。(^_^;)

訂正

すみません。m(__)m
上のコメントは「喜八」でした。

期せずして、同じようなことを考えてましたね。

>専門家のいうことを鵜呑みにしてはならないし、専門家の真似をして金融経済のテクニカルな事柄を学習する必要もない。

というご意見に同感です。

人の作りしモノ

喜八さん

>マトモに考えると、なにがなんだか分からなくなりますね。

同感です。でも、ひとつだけはっきりしていることは、【カネ】も所詮は“人間が作ったもの”だということです。

人間が作ったものであるなら、人間が変えることができるはず。わけのわからない【カネ】の解明に力を注ぐよりも、わけのわかる形に【カネ】を変えていこう...、これが私の訴えたいことでもあり、いまだ(笑)左派でいる(つもりの)理由です。【カネ】の改革こそが「革新」の本丸である、と思っていたりします。

*****

とむ丸さん

自称左派の私としては、もう一歩、踏み込みたい。

>高学歴、高収入、それも度はずれ、桁外れの高収入の専門家たちがはまった心理の罠を考えると、意外にもごくごく簡単なことが根っこにあるようで、驚きます。
(TB頂いたとむ丸さんのエントリーより)

「心理の罠」にはまっているのは専門家たちだけではない。私たち庶民も同様の罠にはまってはいないか。そこをもう一度、“自分の頭で”考えてみる必要があると思うのです。別に深遠な哲学的考察が必要というわけではない。“意外にもごくごく簡単なところに根っこがある”のではないでしょうか?

利子生み資本

おひさでございます。先だってはyoutubeの件でお世話になりました。おかげさまでうまくいきました(^_^)v

金融危機の話を書こうかと思っているのですが、なかなかその気になりません。
アウトラインはみえているのですが、いかんせん難しすぎて・・・

金融市場にかかわるところは毎度おなじみのマルクス尊師は”利子生み資本”と表現しました。
利子生み資本は、社会の隅々で遊休している蓄蔵貨幣をかき集め貸し付ける代償に生産に関わるところの産業資本が生みだした剰余価値や、その剰余価値を実現する流通資本や商業資本から剰余価値の一部を受け取る権利をもつものとしての貸付資本が信用創造をともなって発展したもので、それ自体が剰余価値を受け取り自己増殖するようになったものであります。

利子生み資本は産業資本や流通資本、商業資本などの実体のある機能資本、そして自らも商品として対象化します。そして、商品として市場に陳列された資本のなかでより多くの剰余価値を獲得できるであろうと予測される資本へと投下するのであります。

さて、難解な話はこれまでにして、そんな利子生み資本は資本主義的生産様式の中で果たす役割は、世界中から蓄蔵貨幣をかき集めてきて資本として投下するということ、すなわち無政府的な、盲目的な生産のあり方が支配するなかにあって社会的な価値をタイムリーに社会が要求する生産へと振り分けると言う役割を、人の欲という業を原動力としておこなっているのであります。

人の意識とは自立して心臓が動き、人体の隅々まで血液をおくり続けるように、金融市場という心臓は個々人の意識とはかけ離れたところで自立的に資本主義的生産にお金という血液をおくり続けるのです。それが、あまりの強欲に血圧急上昇、心臓バクバクの挙げ句の果て、心不全をおこしたところに、眼の玉が飛び出るくらい高価なお薬と大量の輸血を投入しても私には短期の延命治療にしかならないとおもえるのです。この度の心不全はアメリカという心臓の致命的なところから生じたものだから。

ちょっとほのめかしになってしまいましたが、ほのめかしついでに、お金はいいかえると労働=人が労働した結果なのだということを頭の隅にでも置いてみると、超多額の公的資金を投入するということがどういう結果をもたらすかはおぼろげながらにでも見えてくるように思います。

資本論第3巻にて扱われる難解な”利子生み資本”の理解が十分でない私にはこの程度のことしか思いつかないので勉強し直さないといけないな~と思っている次第であります。お利口さんになったらもうチョットまともなことを書きたいとおもいます。m(_ _)m

追記に換えて

>危機を好機に変えることができなければ、待ち受けているのは現在以上に“生きにくい”社会だろう。
>一部の者が全てを握るようになる。

こちらの記事を。
『1兆円あれば、即刻全額「買い注文」』(日経ビジネス・オンライン)

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20081014/173658/

この記事には世界一の富豪ウォーレン・バフェットなる人物の名前が出てくるが、庶民とミニ富豪を混乱に陥れる金融恐慌も、大富豪ともなれば話は全く違ったことになる。危機は庶民にとっての好機でもあるが、とてつもない大金持ちにとっても好機。

このままいけば、進行するのは少数に巨大資本による支配だ。日本でも戦前の経済恐慌の後に起きた現象は、中小財閥の淘汰だった。

■東証急騰、終値1171円高 過去最高の上昇率―今はビジネスチャンスが溢れている?!

こんにちは。昨日は、東証も過去最高の上昇率を記録しました。しかし、私はあまり近視眼的な株価の上昇、下落には関心がありません。株価は、しょせんディラーの直近の心理状態を現すだけのものだと思っています。当面この金融危機に関しては、信用不安だけ解消されれば十分だと思っています。それよりも、この金融危機の本当の意味を捉えることが重要だと思います。今や多くの人の頭の中が「経済」というキーワードで埋め尽くされています。しかし、先進諸国ではすでに20世紀の後半部の時点で、それまでとは全く違う「異質な社会」に突入しています。この異質な社会に対応する新しいインフラ作り、システム(制度、IT含む)開発が必要不可欠ですが、今までは不十分でした。そのため、先進国ではいたるところに、ビジネスチャンスが溢れていると思います。そうです。今や「社会」というキーワードが最も重要です。このチャンスをいかすことにより、各所でイノベーションがおこれば、先進国の社会は飛躍的に良くなり、ひいては実体経済も大躍進すると思います。「経済・金融」だけではどうにもならず、八方塞になります。それにしても、この理屈、口で言うのは簡単ですが、楽ではありませんね。金融界の人々もここ数十年やったことといえば、金融デリバティブだけです。頭を使わず、儲けだけ考えで楽をしすぎたのですね。詳細は是非私のブログをご覧になってください。

落語の花見酒

酒飲みが2人で商売をしようと酒樽を担いでお花見の場所に行く話。
後棒が、酒の誘惑に負けて有り金の10文で酒を湯飲みで一杯飲んでしまう。
その後、受け取った先棒がその10文で自分も一杯だけ飲む。
その次は後棒が受け取った10文で飲む。これを繰り返している内に酒樽が空になり、大儲けしたと喜んで金を勘定するが、何とたった10文しかない。
今のアメリカの金融崩壊は落語の花見酒ですよ。
株価の大暴落は単なる結果で、一番の問題では有りません。
金が動いている間は誰も気が付かなかったが実体は落語で、高度な金融工学と称して、落語の花見酒をアメリカが真面目くさってやっていた。
アメリカとも有ろうモノがマサカ落語の花見酒をやっているとは思っていないので、世界中がだまされ自分も参加してしまった。

何もモノを造らず動かさず、単に金や証券、信用保証を業者間であっちにやったりこっちにやったり、彼方此方に回している間に何倍にも価値が膨れ上がる錬金術。
会員の間でお金を遣り取りしている間に何倍にも膨れ上がるネズミ講やマルチビジネスとソックリなアメリカ経済。其れをグローバルスタンダードと称して世界中に広めた。
小泉や竹中平蔵の金融立国とはネズミ講国家のことで、確かに最初は儲かるが必ず破綻が約束されている。
世界の実体経済の4倍にも膨れ上がった金融バブルは元々の大きさまで縮小する筈で、これは日本で経験済みのことです。

おひさです。

今の金融・カジノ経済は確かに虚業の錬菌術なんでしょう(焦)けど(土)、
悲しいかな、色んなハイテク・ブランド・高度生産力は医療(衣料)にせよ・農業にせよ、もちろん軍事も、がっちり部位ると淫[組み込まれ」ちゃってて、容易に「さめた」健全なる生産なんていうものが、「主要なファクター」となっていない。悲しいかな。
90年代にシイ日本共産党委員長が『世界』のインタヴューに答えてはったんを読んでたら、『こりゃあケインジアンにならはったんやなあ』とつくづく思った。
荒っぽくまとめると世界的に有効需要を管理して行く信頼醸成機構の構築っていう感じかな。
まあ急激な革命的変革は、民衆を地獄に追い込むのは間違いないにして。とはいえ、金融のクラッシュから生産・流通の激減もやはり、地獄。ンで、更なる、虚業のツミカサネで「境(裂き?)」送りし続けたいて、いうのが、当面続くであろう現実主義ならぬ、幻術主義なのかも・・。

【価値】ってやつが幻術

【モノ】は【real】。【カネ】は【virtual】。貨幣経済ってのは、詰まるところ、【virtual】によって【real】を制御しようというものなんですね。でも、【virtual】はしょせん【virtual】だから、どこかで綻びが出る。今、私たちの目の前で起こっている現象は、【virtual】の綻びでしょう。

綻びた【virtual】は修正すればいい。【real】を修正するのではなくてね。今、各国政府で行われている政策は、【virtual】の修正ではなくて綻びを繕うこと。【virtual】によって歪められている【real】にさらなる修正を強いて。

限界効用価値説も労働価値説も、みんな【virtual】です。ロシアと再び名称を変えた大地では、一時期共産主義に基づいて【real】を制御していた。それが綻び修正され、現在、資本主義になっている。で、今、資本主義という【virtual】が綻びかけている。そういう話です。

ソ連にとって幸運だったのは、共産主義が綻びた後に資本主義という【virtual】が存在していたということ。旧ソ連の人々にとっては、資本主義は「革新」だったのですね。翻って資本主義に生きている私たちからみると、不運なのは資本主義にとって変わることができる【virtual】がないということです。次の【virtual】を用意することが「革新」の旗を振る人たちの役割なのに。

ケインジアンになってしまった共産党は、もはやお呼びではありません。

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