FC2ブログ

愚慫空論

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『サピエンス全史』その25~進撃の信用

『その24』はこちら (^o^)っ リンク

 


年月が経つうちに、西ヨーロッパでは高度な金融制度が発達し、短期間で多額の信用供与を募り、それを民間の起業家や政府が自由に使えるようになった。この制度はどんな王国や帝国よりもはるかに効率的に、探検や征服に資金を提供できた。新たに発見された、信用制度がもつこの力は、スペインとオランダの激しい争いにも見て取れる。16世紀には、スペインはヨーロッパ一の強国で、グローバルな巨大帝国に君臨していた。ヨーロッパの大部分、南北アメリカのかなりの領域、フィリピン諸島、アフリカやアジアの沿岸部の一連の軍事拠点がその支配下にあった。アメリカやアジアの財宝を満載した艦隊が、毎年セビリアやカディスの港に帰ってきた。一方、オランダは強い風の吹きすさぶ小さな低湿地で、天然資源に恵まれず、スペイン国王が支配する帝国の片隅を占めるに過ぎなかった。




『進撃の巨人』というタイトルの作品があります。



『サピエンス全史』下巻の140ページからの記述。
「コロンブス、投資家を探す」と題されたチャプターから始まって、162ページまで続く一連の文章は、ヨーロッパ帝国主義の進撃。倫理も何もない、理不尽で残酷なもの。

ハラリさんの記述が優れているのは、現象の中に潜む原理をえぐり出していること。
その原理とは「信用」です。
ヨーロッパ帝国主義の進撃は、「信用」の進撃に他なりません。

それも資本家の信用。
資本家が信用する貨幣の信用。
資本家だけではなく、労働者も貨幣や信用します。

16世紀にはヨーロッパ一の強国だったスペインがオランダに圧倒されるようになってしまったのは、信用を侮ったからです。
スペインの国王は自らの権威を投資家への信用よりも重く見た。
国王としては自然な成り行きだと言えるでしょうけれど、投資家の方が強かった。

いえ、投資家は国王とは直接対決をしません。
自らの権威よりも投資家への信用を重く見たオランダに力を与え、スペインに勝利せしめた。

そのオランダもイギリスにその席を譲ります。

17世紀が紆余曲折を経て終わりに向かっていたとき、現状認識の甘さと大陸での費用のかかる戦争のせいで、オランダはニューヨークだけでなく、ヨーロッパの金融と帝国主義的支配の原動力という地位を失った。空席をめぐって激しく争ったのがフランスとイギリスだ。最初はフランスが圧倒的に優勢のように思われた。フランスはイギリスよりも広く、豊かで、人口も多く、規模が大きくて経験豊かな軍隊をもっていた。だがイギリスがうまく金融界の信頼を勝ち取ったのに対して、フランスは信用に値しないことを露呈してしまった。とりわけ悪評を高めたのは、ミシシッピ・バブルと呼ばれる18世紀ヨーロッパ最大の財政危機のさなかにフランス王室が取った行動だった。この話もまた、帝国建設を目的としたある株式会社から始まる。



またハラリさんの話にケチをつけることになってしまいますが、この展開は不十分だと思います。

「オランダがオウンゴールをしてしまって空席ができた」というのは、話としてはわかりやすけれど、この手のわかりやすい話は危険です。大切な何かが埋もれていることがある。

イギリスはうまく金融界の信頼を勝ち取った。
これも実態は逆さまだろうと思います。
イギリスは金融界にその「席」を譲り渡した。
フランスはそうしなかった。
その差がイギリスとフランスの差になった――というと陰謀説の響きを帯びますが。


ゴールドスミス・ノートとは17世紀のイギリスで金匠によって用いられていた約束手形。これが銀行券の始まりとされている。

当初は金匠が金を受け取って、それと引き換えに同等の金といつでも引き換えるという証書であった。当初はこの預り証が譲渡される場合には誰某にその権利を譲渡すると裏書きされていたものの、後に裏書をされないで流通されるようになっていき、これが現金通貨の代わりを果たすようになっていった。

当初は金匠の側に預り証と同額の金が準備されていたものの、後には預かっている金の貸し出しをするようになっていった事から発行している預り証の総額よりも保管している金の総額の方が少なくなっていき、金匠は保管業者から銀行業者へと変わっていった。後に金匠の信用が高まるにつれて、金匠は自己の責任において金の取引が行われていないのに預り証を発行するようになっていき、預り証は銀行券の原初形態となっていった。

後にイングランド銀行が発行した銀行券は、このゴールドスミス・ノートを倣ったものであった。



「信用」を信用する投資家・銀行家は、表だって権威を纏うことはありません。
自らよりも重んじてくれる人たちを勝利せしめる。

数年前に話題になったアニメの、とあるキャラクターみたいな存在です。




ミシシッピ・バブルについては、この事件に衝撃を受けたゲーテが、畢生の大作『ファウスト』の第二部を書き始めたという話が伝わっています。
『ファウスト』については、別の機会に触れてみます。


科学革命は「無知の革命」です。
その「無知の革命」が生んだ最大の成果が、「信用」の創造です。

まだ知られていないことが利益になる。
言葉だけで考えれば、「知られていないことが利益」などということは、ありえるかもしれないしありえないかもしれない、あくまで可能性の話でしかありません。
が、歴史においては、必然の成り行きでした。

けれど、やはり、これは可能性の話でしかありません。
それを【人間】は勘違いをしていた。
【人間】に可能だったのは、他に【しわよせ】を追いやることだけでした。
その【しわよせ】が人間自身にも及んでいる。
強く、大きく、深く、及んでいます。

『その26』へと続きます。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://gushou.blog51.fc2.com/tb.php/1076-c911f817

 | HOME | 

 
プロフィール

愚慫

Author:愚慫
“愚樵”改め“愚慫”と名乗ることにしました。

「空論」は相変わらずです (^_^)

      

最近の記事+コメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

QRコード
QRコード

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。