愚慫空論

『サピエンス全史』その24~科学が先か、帝国主義が先か

『その23』はこちら (^o^)っ リンク

 



事業を始めようとする現代の起業家のように、コロンブスは諦めなかった。イタリア、フランス、イングランド、そして再度ポルトガルを訪ねては、投資をしてくれそうな人に自分の考えを売り込んだ。だが、そのたびに拒否された。そこで、統一されたばかりのスペインを治めるフェルナンドとイサベルに賭けてみることにした。コロンブスは経験豊かなロビイストを数人雇い、彼らの助けで、どうにかイサベルを説得して投資を承諾させた。小学生でも知っているように、イサベルの投資は大当たりした。コロンブスの発見に導かれてアメリカ大陸を征服したスペイン人は、その地で金銀の鉱山を開発し、サトウキビやタバコのプランテーションを建設した。そのおかげでスペイン国王、銀行家、商人たちは思いもよらないような富を手にした。

100年後、君主や銀行家たちは、コロンブスの後継者たちに対してはるかに多くの信用供与を行うことを厭わなかったし、アメリカ大陸から得た財宝のおかげで、彼らの手元には自由にできる資金が前よりも多くあった。同じく重要だったのは、君主や銀行たちが探検の将来性にはるかに大きな信頼を寄せるようになり、進んでお金を手放す傾向が強まったことだ。これが帝国資本主義の魔法の循環だった。すなわち、信用に基づいた融資が新たな地理上の発見をもたらし、発見が植民地につながり、植民地が利益を生み、利益が信頼を生み、信頼がさらなる信用供与を実現させたのだ。ヌルハチやナーディル・シャーは数千キロメートル進軍したところで燃料を使い果たしてしまった。資本主義の起業家は、征服のたびに融資を受ける額が増えるだけだった。



『その22』『その23』あたりでぼくが指摘したことは、言うまでもなく『サピエンス全史』にも記述されています。

ぼくは一度ならず『サピエンス全史』を通読しています。
なので、そうした記述が後の出てくるのは知っていました。

『その20』で述べたように、違和感は記述の順番です。

「無知の革命」は科学革命に先立って「帝国資本主義の魔法」を生みだしていた。
歴史において、順番は大切です。
事実の時系列こそ歴史なのですから。

アイザック・ニュートンが『自然哲学の数学的諸原理(プリンキピア)』を刊行したのは1687年。
重要なのは、数学的だということ。
でも、数学的なことを始めたのはニュートンが最初ではありません。
もうすでに「信用」が数学的な体裁を整えて、ヨーロッパ帝国主義を支えていた。

数学的体裁を整えた「信用」が無知を切り拓き、社会に利益をもたらす。

もう一度、『その20』で引用した記述を再掲します。

古代の知識の伝統は、二種類の無知しか認めていない。第一に、個人が何か重要な事柄を知らない場合。その場合、必要な知識を得るためには、誰かもっと賢いひとに尋ねさえすればよかった。まだ誰もしらないことを発見する必要がなかった。(中略)

第二に、伝統全体が重要でない事柄に無知な場合。当然ながら、偉大な神たちや過去の賢人たちがわざわざ私たちに伝えていないことは、何であれ重要ではない。(中略)これが人間の繁栄と救済にとって必要な、重要極まりない情報だったら、神は聖書に広範囲に及ぶ説明を含めていただろう。



「無知」は人間の繁栄と救済にとって必要な、重要極まりない情報になった。
正確には、“人間の”ではなくて、“ヨーロッパの”ですが。
コロンブスの「発見」によって。

コロンブスの「発見」によって、すぐににヨーロッパ帝国主義は起動した。
冒頭の引用にあるように、コロンブスの100年後にはすでに大車輪で活動しています。
ニュートンが生まれた時代には、すでにヨーロッパは帝国主義の時代だった。


歴史的に考えれば、科学は帝国資本主義が生んだ魔法の一派に過ぎません。

数学的諸原理は、まず〔社会〕を席巻した。
貨幣という具体的な【カタチ】によって。
科学は社会が席巻され始めた後の生じた、〔世界〕を席巻しようとする試みです。


真摯な科学者であれば、そうした試みそのものは尊いものの、最終的に席巻し尽くすことは不可能だろうと察しているでしょう。
ところが社会学者になると、真摯な察し方はそうならない。
席巻し尽くすことが真摯な姿勢だと考えてしまっているように感じます。

その点、ハラリさんは違うと思います。
席巻し尽くせないと察しているように見受けます。
その「察知」の意義の大きさからすれば、科学誕生への偏見などは小さな瑕疵に過ぎないと思います。


『その25』へ続きます。

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