愚慫空論

『子は親を救うために「心の病」になる』(前編)



当記事は、前記事からの続きです。

 ⇒ 『サピエンス全史』その18~サピエンスにおける瑕疵

サピエンスには持って生まれた「瑕疵」があります。
サピエンスだけではない、あらゆる生物には「瑕疵」がある。
各々の生物はそれぞれに「瑕疵」を抱えながら、その「瑕疵」とせめぎ合いながら生きていく。

生命にとって、「せめぎ合い」は本来、悦びそのものです。
もちろん、悦びはしあわせです。


身体的な持ち分からすれば食物連鎖ピラミッドの中ほどに位置するのが相応しいであろうサピエンスが、現代ではあらゆる連鎖の頂点に立つという事態になっています。

そのことによって「せめぎ合い」のあり方が変わってしまった。
変わって、どこかに「しわ寄せ」が行くようになった。

「しわ寄せ」にはマクロな方向とミクロな方向とがあります。
歴史はマクロな方向の「しわ寄せ」の推移。
ミクロな方向でいくと、本書のタイトルのような形になる。


アマゾンのページから、冒頭の30ページほどを読むことができます。

本書において展開されているのは、
 著者の視点による現象の観察と、
 観察から得られた主観的事実にもとづく仮説の提示です。

著者の提示する仮説を受け入れるかどうかは、読者次第。

読者が著者の仮説を受け入れ、その仮説に基づいた現象解釈をも受け入れるのであるなら、本書は説得力のあるものになる。
著者が披露する現象解釈を自身の体験と重ねるようなことになれば、救いになる。

アマゾンのレビュー欄には、そのようなコメントも散見されます。


仮説の基本命題は

 子は母親から「心理システム」を学ぶ

このように記述すると子は一方的に学ぶというふうに捉えられてしまいますが、実際はそうではありません。



〔学習〕というのは、常に双方向です。
子が学習しているのであれば、親も学習しています。
野口整体などは、親の学習に焦点を合わせていると思います。

なお、上の図は



から拝借したものです。

さらに模式的にすると、



「ハラスメント」とは、これも『ハラスメントは連鎖する』の図をお借りしてみると、




本書『子は親を救うために「心の病」になる』は、

 第一章が「息子は親を救うために引きこもった」
 第二章が「娘の摂食障害が、母親の人生を回復させた」

です。
これら2章の内容は、ハラスメントからみると同一の構造をしています。

 ・親が〈学習〉を停止する。
 ・〈学習〉のフリをされてしまう子は苦しくなる。
 ・子は「心の病」を発症し、親は困惑する。
 ・カウンセリングによって、親は学習を再開する。
 ・親も子も苦しみから解放される。


では、なぜ親は〈学習〉を停止してしまうのか?
本書にも、親の〈学習〉停止の背後に【システム】が見え隠れしています。

子は〔ヒト〕です。
親は〔人間〕です。
〔人間〕は〔社会〕に所属しています。
現代の〔社会〕は【社会】です。

これらの要素から、親の学習停止の理由はカンタンに図示することができます。



【社会】とは〈学習〉をシステマチックに停止させる存在です。
〈学習〉を阻害することによって秩序を維持している〔社会〕が【社会】です。

〔人間〕である親は〔社会〕とコミュニケーションをしていかなければなりません。
〔社会〕とのコミュニケーションは〔人間〕が生存していくための必須条件です。
〔社会〕が【社会】であった場合、親の〈学習〉は停止していきます。

自らの〈学習〉を停止させて【社会】とコミュニケーションを為す。
これは【適応】です。

【社会】に【適応】して〈学習〉を停止させてしまった親は、子とのコミュニケーションにおいても〈学習〉を停止させてしまいます。そして、自らの(無意識の)意志で「心の病」を発症させる。


本書の第一章第二章にあるのは、【社会】によって〈学習〉停止を強いられた親が、子によって〈学習〉再開に導かれる様子の描写です。
すなわち〈学習〉再開こそが「救い」です。

その描写の中に出てくる特徴を抜き出してみましょう。

 ・〈学習〉停止は苦しい。子にとっても、親にとっても。
 ・〔人間〕である親は苦しさを「我慢」することができる。
 ・〔ヒト〕である子は苦しさを「我慢」することができない。
 ・親は子に「我慢」を教えようとする。
 ・〈学習〉によって成長しようとしている子には親の苦しさを察知する能力がある。
 ・「我慢」を習得した親は子の苦しさを察知できる能力を喪失してしまっている。
 ・子は「我慢」を「心の病」になることによって拒絶する。


『中編』へと続きます。


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